#15 ある不器用な騎士の物語10
※更新ミスりました。次回書き貯めた分のストックを少し放出します。お読み頂いている皆様、すいませんでした......。
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「これ程沢山魔物関連の依頼があるのですね。ちょっと驚きました」
「そうかい? 少ないと思うけど······って、凄い。地域別にしっかりと分けてくれている。何だか感動するなぁ。僕が国王として政務や内政処理をしていた時は全てごちゃ混ぜでさ。担当官が目の下に隈をつくり泣きながら整理してたのに。今のこれを見たら皆感動して卒倒してしまうよきっと」
ちょっとした小山のような依頼書をリードは手際よく目を通していく。こういった書類を捌く技術は、恐らく国王であった時に磨かれたものだろう。
流れるように依頼書を捲るリードを見詰めるマリー。なんだかリードらしくない。と、本当に失礼な事を思いつつも、それを言葉にはせず飲み込むのであった。
「······あの、マリーちゃん? 今僕らしくないなんて考えてないよね? もしや、僕が初代国王だって事すらも疑ってない? そんな事考えてる訳じゃないよね?」
「何を言うんですかそんな事を思う筈がないじゃないですか私は素直に凄いなと思い改めて尊敬の念を強く抱いていた所です流石聡明な初代国王様です感服致します」
しっかりとバレていた。
全ての賛辞を棒読みしたマリーはそれよりも、と、急いで話をすり替えにかかる。
「何故この国周辺の魔物関連の依頼書だけを頼んだのですか? 討伐に行くのですか?」
「まさか。確かに、それも大切な事だと思うけど既にこの世を去った僕が手を出すまでもないと思うよ。最も、この辺の魔物の生息状況が変わっているなら話は別だろうけど。それにしても僕がやる事ではないよ。僕はマリーちゃんの護衛として現界したんだから」
「ならば、何故その依頼書を確認中なのですか?私にはよく分からないのですが······」
首を傾げるマリーをちらりと見やり、しかし依頼書から目を離さずリードは答える。
「それはね、僕が今言った様に魔物の生息状況を確認しているんだよ。この三百余年の間にどう変わっているのかをね。そこから色々と見えてくるんだよ。何処の地域が被害を多く受けているのか、どういう被害が出てるのか、そしてどういう魔物が多いのかをね」
「······素晴らしいです。そんな事考えもしませんでした。今度こそ私はリードさんを見直しました。今までの不敬をお許し下さい、初代国王様」
「今自白したよね? 今度こそっていったよね? 全く、まぁいいけどさ。それで、どんな人が《英霊》になりえる資質を持つ者なのかが分からない以上、こういう事も調べておいて損はないと思ってね。この後は酒場に行って情報収集する予定でいるよ。あ、マリーちゃんはお留守番だよ? 僕に対する不敬罪を適応させてもらおうかな」
仕返しだよ。と、笑顔を向けるリードに散々と騒がしく文句を言うマリー。そこに、先程の男性職員が近付き小さく咳払いをして警告を示す。
お互い小さく謝罪を告げて静かにしようと頷き合うのであった。
そんな矢先······。リードが小さく疑問を漏らす。
「うん? これは······いや、まさか」
「どうかしたのですかリードさん? なにやら険しい表情をしている様ですが」
「いや、ちょっと気になる事があって······。おかしい、これも、これも······マリーちゃん、ごめん。少し予定変更だ。まだまだここで調べる必要がありそうだ。それに、もしかしたら......いや、先ずは置いておこう。ごめん、少し待っててね!」
マリーの返答を待たずリードは受付へと走る。何が起きているのか分からずおろおろとするマリーは、此方を伺っていた男性職員と目が合いお互いに首を傾げるのであった······。
◆◇◆◇◆
「くぁ······っと。あーかったりい。よーやっと調書から解放されたぜ。っと、もう真っ暗かよ。折角の俺の休日が」
ラヴェルが窃盗犯を捕まえ、騎士団の詰所にて調書を取り終えた後に解放されたのはすっかり闇の帷が降りきった頃だった。
休日にやった事と言えば、実家に顔を出し母親を激怒させ左手を圧迫骨折させられかけ、逃げ出た先でスリの男を捕まえただけであった。
「あーあ、まぁーた暫く休日はお預けか。······ん? あいつらは確か、今日の当直だった筈。······珍しいな、こんな時間まで出払ってたなんて」
ラヴェルが騎士団詰所から独身寮に戻る道すがら、道向かいから疲れた様子の騎士達が歩いてくる。
その中の見知った顔の騎士がラヴェルに気付き声を掛けてきた。
「なんだよ、誰かと思ったらラヴェルじゃねーか。休日だったんだろう? 何してんだよ詰所なんかでよ」
「ちょっとした国と民への忠誠心てやつをみせただけだ。それよりも、お前らこそこんな時間まで残業たあ精が出るじゃねーか。何かあったのか?」
「止めろよ、お前に忠誠心とか似合わねーからよ。俺らは正に残業よ。ちいとばかし弱いもの虐めに興じてきた訳だな」
そう言いながら、騎士の男と互いに拳を打ち合わせて挨拶を交わし、他愛ない世間話に興じる、
「ご苦労さん。てか、変な時間に魔物が彷徨くの最近多くねえか?」
「だな。酷い日にゃ夜中に塀の外で喚いてやがるぜ。普通は矢を放ちゃ逃げる癖に逃げねえのがいるんだよな。流石に魔法を放ちゃ逃げるんだが、どうにもしつこくてよ」
「ただのアホだろ。発情期か?」
「だっはっは! 馬鹿言ってんなよ! おう、それよか飲みに行かねーか? たまにゃ付き合えや。奢るぜ?」
奢りなら仕方ねえ。と、ラヴェルは同僚達と共に出てきた詰所へと再び戻っていくのだった······。
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