#14 ある不器用な騎士の物語9
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「ようこそ《ハンターズギルド》へ。御用件を御伺い致します」
「すみません。実は、今日はどんな依頼があるのかを下見に来ただけなんです。特に王都周辺の魔物討伐などの魔物に関する依頼を中心に見せて下さい」
「賜りました。少々御時間を頂いても宜しいでしょうか。此方で纏めてからお持ち致しますので、空いているテーブルにてお待ち下さい」
とても丁寧な受付嬢がてきぱきと依頼書を纏め始めるのを見て、未だに物珍しげに周りをきょろきょろと見渡し落ち着きのないマリーを連れ、空いているテーブルへと腰を下ろす。
「ふぅ、驚いた。どうしてこんなに小綺麗になってるんだよ。しかも、受付の子は凄い丁寧だしさ。危うく僕も貴族達に遣う様な丁寧口調になるところだったよ。僕の知ってる《ハンターズギルド》とは似ても似つかないな」
「という事は、昔の《ハンターズギルド》はもっと酷かったんですか? どんな感じだったのかとても興味があります」
「そうだね······、僕の生きた時代ではもっとこう、殺伐としていたというか。集まる《ハンター》達も一様に疲れ果てた顔をしていてさ。それに荒れていたね。人も町も何もかも。世界中が疲れ果てていたんだよきっと」
「それは······。その、すいません、そんなつもりで聞いた訳では······」
「あはは。大丈夫、分かってるよ。けど······、そうだね。あの時は、本当に世界中が荒れ果てて、雲は黒くて分厚くて、陽の光も届かない薄暗くて冷たい時代だったんだ。いつも何処からとも無く叫び声や泣き声、争う声が響いていたよ。それに、とにかく魔物が多く溢れててね。正に《暗黒の時代》と呼ばれる時代だよ。僕がマリーちゃんと同じ年の頃には、既にナイフを握り締めて大人の《ハンター》達に混じって魔物を倒して回ってたっけ。そんな時、色々と世話になったのが《ハンターズギルド》なんだ」
若かりし頃を思い返し少しだけ目を伏せるリード。自分の生きた時代と今の時代とを比べれば、如何にこの平和な日常が尊いものかを実感する。
マリーは自分の知り得ぬ暗黒の時代の片鱗に触れて、如何にそこに生きる者達にとって熾烈で過酷な時代だったのかを知る。そこで、ふと頭に浮かんだ疑問をリードへと投げ掛ける。
「そもそも、魔物とは何処からやってくるのですか? 動物等とは違うという事は分かるのですが」
「······うん。そこが一番の問題なんだ。魔物は一体何処から来て、どうして人々や動物達を襲うのか。その答えは諸説あるけど、根本的な出所は恐らく今も分かってはいないんじゃないかな」
「そう······ですか。私が読んだ書物には、魔力が多く残留する場所《魔力溜まり》に動物等の生き物達が何等かの理由で迷い混み、強すぎる魔力が生き物達を変質させた。と、書いてありましたが」
「それが一般的に広く知られる理由だろうね。元に、僕もその現象を何度も見た事があるよ。けどね、本当にそれだけなのかな? 本当に動物達やその他の生き物達だけ突然変質してしまったのかな? 僕はそうじゃないと思っているんだ」
「それは一体······? じゃあ、誰かが意図的に魔物を何等かの理由で《創り出した》と言うのですか? そんな事が可能なのですか?」
「うん。僕は今でもそう思っているよ。じゃないと説明のつかない、色々と不可解な出来事が沢山あってね。それで《魔王》が住む《封印の孤島》でも色々調べて回ったし、この地に帰ってからも様々な手を尽くして情報を集めていたんだ。まぁ、結局は分からないままだったんだけどね。けど、これだけははっきりと言える。必ず《黒幕》がいる。それが何者かは分からないけど、必ずいるはずなんだ」
「《黒幕》ですか······。例えば、その《封印の孤島》に住むと言われている《魔族》達はどうなのですか? 一番確率が高いと考えるのは安直でしょうか?」
「確かに《魔族》が一番怪しいとは僕も思っているよ。けど、《魔族》達が全員が全員そうではないとも断言出来る。彼等も僕達と何ら変わらない存在なんだよ。しっかりとした意思を持っていて、他者を想う心もある。僕達《人種》も同じだろう? 善人がいて悪人もいる。だから、全ての《魔族》達を一括りにして考えるのはいけないよ? それは明確な差別になってしまう」
「あぅ······ご免なさい。そうですね、彼等も私達と何ら違わぬ《亜人種》なのですものね。申し訳ありません」
「出自や外見とかで恐ろしく思ったりするのはよく分かるよ。けどね、彼等はあくまで等しく僕達と同じ人間なんだ。対話し、意見を交わし、共存出来るんだ。だから、マリーちゃんにはそういう偏見を持って欲しくはないかな」
ご免なさい。と、小さくなるマリーの頭を撫でやりリードは優しく嗜める。世界にはその地域に適した独自の進化を遂げた《亜人種》達が多数存在する。
代表的な《亜人種》は······獣人種、魚人種、巨人種、小人種、精霊人種、魔族等で、その中から更に分岐する種族を入れると数えきれない程多くの《亜人種》達がいる。
それらは互いに干渉せぬ様にとある程度の線引きを行い、其々の生活や文化を守り暮らしている。
しかし、例外というのは何処にでもいて世界中を渡り歩く者達も数多くいる。
リードが《魔王》を倒した後の平和になった世界では、一国の王としてリードが各国に進言し、蟠りや差別的な偏見は薄れ、異種族間の結婚等も珍しい事ではなくなり、様々な《混血種》が世界中に誕生する様になった。それほどに広く世界に認知され交流を深めているのだ。
そうして、雑談を交えて待つ二人の元に、先程の受付嬢とは違う男性職員が多くの依頼書を抱えて現れ、丁寧に纏められた依頼書をどさりとテーブルの上に積み上げていったのだった······。
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