21回目のプロポーズ「御伽戦隊 緑ウラシマ」(決)
ーー焔のダンジョン地下2階。二日目。
夜。
僕たち一行の目の前には黒い海が広がっていた。
遠くからボーッという何かを吹いて鳴らすような音が聞こえてくる。寄せては返す波の音も下方から聞こえてくる。
水分を含む潮風は、独特の肌触りを僕に感じさせ、魚の臭いだろうか、鼻につく。
遠くで、何か大きな光が来る来ると横に周回しているのが見える。ゲオーが呟く。
「どこかの港かしら…………」
僕たちは、ゲオーの言うコンクリートの地面を歩いて、とりあえずどこか一夜を明かせるような場所を探すことにした。
暫く歩いていると、大きな通りに出た。人は誰もいない。通りを照らす灯りのみが点々と道に合わせて存在する。
なんだか寂しい場所だな。
店は道にちゃんと並んでいて数は多いのだが、どこもシャッターと呼ばれる扉を閉めている。そのシャッターは幾分か錆びれていた。時折吹く風にガタガタと音を立てて。
とある店のシャッターに張り紙が貼られていた。
『今年の夏の花火大会は中止となりました』
余りに人気がないので、僕たちはいよいよ野宿を覚悟し始めた時、近くで誰かの叫ぶ声が聞こえて来た。
「だ、誰かああ?!ヒーローはいませんかあ?!」
僕たちは、互いに顔を合わせ頷き、声のする方角へと走り出した。
「怪人です!怪人が出ました!」
僕たちが駆けつけると、そこには亀のような化け物がいた。男性三人が通りの袋小路で追い詰められている。
「ぶはははっ!このカメキャノン様に敵うヒーローなど存在せん!我ら闇のドラゴン団の餌食となるが良い!」
僕はすかさず、奇怪を取り出し召喚を試みようとしたが、剣士フロリダが『飛龍一閃』という無茶苦茶素早い斬撃を繰り出し、カメキャノンは散り散りになった。もう『それ切り過ぎじゃねえの?』ってくらいの散り散り具合だ。確かに散り散りだったのだ……。
「くうう……。覚えておけ!えっと、……お前ら誰?う〜ん。ちっさい女っ子に、目つきの悪い巨乳キャラ、ちょっと隠キャ!お、お前は美人だな…。あと原始人!」
カメキャノンは当然僕らの名前を知らないはずなので、とりあえず外見的特徴を言ってみたのだろう。ちなみに皆さんはすでにお忘れかも知れないが、僕は今、原始人のような格好をしているのである。
カメキャノンは爆煙とともに消え去った。いつの間に仕込んだのだろう。
襲われていた男三人は、僕たちに丁寧な礼を言う。とても低姿勢の感じの良い三人組であった。決していじめをするような三人組には見えない。分別ある『大人』である。
その時、心拍数が上がるようなリズムの音楽とともに、『奴』が現れたのである。
「待てええい!」
緑色のジャケットというものを羽織り、首に緑のマフラーをたなびかせ、腰には妙にごつ目の重そうなベルトをしている。
どうやってよじ登ったのか、どこかの店の屋根に仁王立ちしていた。
「ようやく尻尾を出したな、闇のドラゴン団!貴様たちは正義のヒーロー、御伽戦隊の緑ウラシマが相手をしてやる。かかって来い!」
僕たちは意味が分からないので、とにかく様子を見守ってみた。
「ええい、なぜ黙っている?!貴様らの野望もここまでだ!早いこと、それらしい事をそれらしく言え!」
無論、人違いである。っていうか、さっきのカメキャノンと勘違いしているようだが……。
「もう、なんだよ?!えっとお前、そこのお前、原始人!お前だよ。おい、横向くな。原始人はお前しかいないじゃねえか。お前はどうして悪に染まったんだ?」
「え?いや、悪に染まってなんかいないですけど……。戦争を止めるため、平和を求めてここに来てるんですよ?」
「え?え?悪なのに平和求めて悪さしてんの?何それ、もしや哲学?ちょっと深めの展開?見た目は原始人なのに?いや、それキャラブレしてない?もっと悪なら理由あるだろ?人類滅亡とか、世界を闇に染めるとか、分かりやすいやつじゃないと、皆んなに伝わりにくいんだよ」
「(皆んなって誰だ?)人違いですよ!お目当てはカメキャノンじゃないですか?」
「カメキャノン?そんな奴はまだ会っていないので、私は全然知らないのだ!…貴様、さては私が御伽戦隊の中で、緑だからいまいち立ち位置がはっきりしてない事を良いことに、悪の道へ引きずり込もうとする腹だな?」
この男は身振り手振りや言葉の抑揚が強すぎて、余り好きになれない……。
「もう降りて来て話しましょうよ。なんか遠いから、声張らないといけないし、ご近所の迷惑ですよ。その音楽も音でかいし。しーっ!」
「うるさい!私も五色の中で一番成果が上がらなくて必死なのだ!これ以上は問答無用!とう!」
グキッと音がした。緑ウラシマの想定以上に屋根から地表には、高さがあったからであろう。
緑ウラシマは両足首を捻挫した。
× × × × × × × × ×
僕が緑ウラシマを背負い、皆んなで彼の自宅へと送り届けることにした。
道中、緑ウラシマとまともに話せたことで僕たちへの誤解は解けた。ちゃんと話せば人に伝わるのだ。力に頼る必要なんてないのだ。
そう言えば、ゲオーは回復系の加護を持っていると剣士フロリダから聞いていたのに、なぜこの時使用しなかったのか、後になってこっそり尋ねてみた。
「だって一晩明かす場所、欲しかったんじゃないの?」
こういった発言は反発を食らうかも知れないが、女は時に現金である。




