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10回目のプロポーズ「武器や防具は装備しなきゃ意味がない」(決)

※8月28日に改稿しました。

 思えば、バイカル王国以外の街の様子をこの目で見るのは初めてのことだったし、隣国とはいえ、エーゲ帝国の城下町は想像以上に活気に溢れて、僕の心は踊っている。市場の露店の初めて見る美味しそうな料理の数々、都度どんな味かと僕と少女ゼウスは尋ねて回り、匂いを鼻一杯に吸い込んで、言われた味を目一杯想像する。剣士フロリダから「貴公は観光に来ているのではないんだぞ…」と溜息が漏れ、隣のセグンダは苦笑いを浮かべる。



「焔のダンジョンに向かう前にまずは装備や道具を揃えよう」



 剣士フロリダの提案に、真っ先に焔のダンジョンへ向かうつもりだった僕と少女ゼウスは梯子を外された気分になったが、何の準備もせずにダンジョンという激烈な冒険ワードに突き進もうとしている無謀さは、剣士フロリダからして見れば自殺行為も甚だしいに違いない。そこからの僕と少女ゼウスの冒頭のやり取りだ。

 エーゲ帝国側の人間が呆れてしまうのも無理もない。



「なあ、セグンダ。あれ何だ?」



 バナナ飴ならぬマンゴー飴というものを舐めつつ、僕は尋ねる。



「あれはエーゲ帝国の焔の獣神玉が収められている台座です」



 僕たちが生活している、この大陸は元は生命が育まれない極寒の大地と言われている。僕たち人間がどこからか焔の獣神玉を持ち込んだことにより、現在のような多様な生態を手に入れたらしいのだ。これはエーゲ帝国だけの話ではなく、バイカル王国もまた同じである。つまり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、その土地は氷に覆われ、命を失う。国家の滅びと言っても良い。


 「お〜い」という僕たち一行に向けた誰かの声が聞こえた。剣士フロリダは手を振る。

 誰だ?誰か知り合いでも見つけたのであろうか。



「抜け出すのが思ってたより手間取っちゃった。ごめん、フロリダ」



 走って来たからであろう。その息の荒い人物が上げた顔を見て驚いた。なんとエーゲ王だった。



「遅いぞ、ゲオー。相変わらず変装が奇抜だな」



 エーゲ王は黒の、上から下まで比較的ぴったりとした一枚布で出来た服を着ている。他に見かけた事のない服装だ。下はスカートである。



「さっきは無礼な物の言い方をして、本当にすいませんでした!」



 玉座での口ぶりと様子の違う『本当の』エーゲ王の姿を見て僕は唖然とした。あのエーゲ王が僕に頭を垂れて自身の非礼を詫びているのだ。あの高飛車で高慢な口ぶりと今の話し方との隔たりは、僕にそれなりにショックというものを与えた。



「ああいう喋り方や態度を取らないと老公たちがうるさいんです。あんな態度普通に考えたらムカつきますよね?だから本当、胸が痛くて、痛くて・・」



 僕は一気にエーゲ王との心の距離が縮まった。



「改めて。エーゲ王です。幼い頃から指南役について貰っているフロリダからは、ゲオーと呼ばれています。だからケイも気軽にゲオーと呼んで下さいね。あ、大事な事を言ってない。私も皆んなと一緒に焔のダンジョンに行きますから。それじゃ一緒に頑張りましょう!」



 剣士フロリダが僕の不安を払拭する為なのか、口を開いた。



「問題はないぞ。ゲオーの基礎能力はケイより数段上。しかも治癒の加護も備えている。パーティーとしては必要な人材だ。あ、ちなみにケイは一般庶民よりも数段下の身体能力であったな。わははは!」


 剣士フロリダは時折僕に辛辣な発言をして笑いを取ろうとする。全く笑えないのだが。



 × × × × × × × × ×



 剣士フロリダが足を止めたのは、武器屋の前だった。



「貴公はここで武具を揃えると良い」



 ほほう。武器屋で買い物ですか。30代半ばで風前の灯だった男心に火が付くようなイベント、

 それが武器屋で買い物ーー。


 ただ気になることが一点。僕は無一文だ。さっきだって剣士フロリダの目を盗んで、セグンダにマンゴー飴を二つ買うお金をちょっとばかし借りたばかりなのだ。無論、マンゴー飴のもう一つは少女ゼウスが今ぺろぺろしている。



「お金の心配はしないで。私、けっこうお金持ちだから」



 さっそく有り難え・・。確かにパーティーに一人くらい王様は必要かもしれない。

 僕らは武器屋で用意出来る最高の武具を揃えることにした。



「いらっしゃい。ウチの店でお出し出来る最高の武器は、聖騎士の剣かな」



「すまん、店主。武器を買いたいのは私ではなく、彼なのだ」



「え?う〜ん。えっと、どうしたら良いかな・・」



「その聖騎士の剣は僕に売れないものなんですか?」



「売っても良いけど、武器や防具は持ってるだけじゃ意味がないんだよ。装備できなきゃ」



 店主は悩んだ末、僕に魔導の杖を渡した。

 あれ?

 僕は職業勇者のはずだが・・。



「思いっきり、ふりかざして見なよ」



 僕は「えいっ」という言葉を吐いて、それとなく杖を振ってはみたものの格別何の変化も起きなかった。



「あれ?これじゃねえのか…。弱ったなあ…。斧?いやアックス系は絶対違うだろう。う〜ん。ダガーとか短剣系か?う〜ん…」



 武器屋一筋40年のベテランを悩ます30代半ばの勇者の僕はさすがに申し訳ない!



「すまん。これがウチで今用意出来る最高の武器防具セレクションだ」



  武器:こん棒

  防具:ワンショルダーのベンガル牛皮製ワンピース

 ベルト:樹齢400年お化け樹のつる皮

  足元:魔法草の手編みサンダル



 なんか、部族感出てますけど・・・。



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