ブルー様に会う
白の塔の研修生として、イーリの部屋で毎日ケント師匠と異世界へ光を届ける活動?をしている。
「誰からも文句が来ないからいいんだ、シャラナも言わないだろう?」
ええ、シャラナもユーリ宰相補佐も文句は言いませんね、最悪の場合、禁止されると思うけど。
「だからいいんだ、ナディーヤに会えてよかったよ、子供の頃からずっと異世界にとり憑かれてきたからな」
ケント師匠に託された何かがあったんでしょうね。
「勝手に執着してきたかもしれない、多くの人たちがそこで暮らしているのに、一人でなんとかしたいなんて」
反省することもあるんですね。
「やっとそこにとり憑いた自分を動かせそうだ、別の人の力って必要なんだなあ」
今までどれだけ勝手にやってきたんですか。
「なんで黙ってるの?」
わたしの感想が知りたいんですか?
数週間後のある日、いつものようにイーリの部屋での研修が終わり、夕陽がまぶしくみえて薄暗い部屋から外に出たい、なんて考えていたときに、ふいに人の気配を感じた。
窓側にいたわたしが部屋の入口を振り返ると、薄暗がりの中ではよく見えないはずの風景画と部屋の隅が、神々しい青い光に包まれていた。
透き通るような青みがかった姿がぼんやり浮かび上がる。流れるような薄い衣装に付けられた、連なった青い宝石が揺れて輝き、大きなネックレスがいくつも重なって光を放つ。
「どなたですか?」
神々しい気配がしている。
「話したいことがあって来た、ブルー、とよばれている」
古風な飾りがついた長い髪の、美しい人が立っていた、人ではない、と思われるほどの青い光を放つ。
とりあえず椅子を出して座ってもらった。
「私のことはミサトがよく知っている、後できいてくれ」
「ケント師匠に話があるんですか?」
そのようなので、自宅に戻っていたケント師匠を呼び出して、しばらく待っているうちにイーリも来た。
「今ここから出ている光がどうなっているのか、わかることを説明したいんだが」
「ブルー様ですね、エルフのイーリと申します、お越しいただいてありがとうございます」
「ケントとこちらはナディーヤです、よろしくお願いします」
めずらしくケント師匠がまじめに挨拶をすると、ブルー様の宝石のような硬い表情が少し緩んだ。
「異世界に光を届けることが、どうなるのか、よくわからなくてもきいてほしい」
やはり問題があるのか、と緊張する。
「とても美しい光の粒は、連なった世界の重なった部分に良い影響を与えている」
よかった、文句を言いに来たかと思った。
「光が放たれる時に、偶然ここと重なった別の世界の土地に特別な力が降り注ぐ事になる」
成功したんですね。
「それは光の粒ほどの小さな物質に影響している、人間ではないもっと小さな物質で、小さなところが光であふれてきている」
「小さなところ、ですか?」
「元々何でも小さなものでできているんだ、小さな事でもすばらしい」
「はあ」
ケント師匠はよくわかってない声で返事をした。




