光魔法の贈り物
ケント師匠は学生の頃から異世界を救うために小さなものを送ってきたそうだ。
「ここでイーリと相談して、浄化する花の種とか、スライムとか送ったんだけど」
小さい種はどこかに飛んでしまって、スライムはその付近を浄化したようにみえたんだけど、だんだん汚染に負けていってわからなくなったそうだ。
「ひどい汚染なんだよ、大きな光魔法を飛ばしたかったんだけど」
止められましたね。
「父さんがそう言うなら、きっとその世界の仕組みを確かに感じていて止めたと思う」
「小さな光魔法で救いになるものってなんでしょう?」
「うーん、ミサトが歌うと心の中が浄化される、みたいなことか」
えー、ミサトが歌うと?いつも忙しそうで心の浄化に効果があるようにはみえないけど。
「なにかない?」
「わたしが最近シャラナからもらった心がみえる視力があるんですけど」
「闇魔法じゃないの?」
あ、そうか、光魔法ね、わたしじゃ闇魔法しか考えつかないかも。
魔法学校でナナにきいてみた。
「汚染された世界に送ると救われるような、小さな光ねえ」
ナナにも難しいみたい。
「私ならひどい状況でも、おもしろい小説が突然大量に現れたらすばらしい世界にしてくれて神様ありがとう、って思うわ」
ああ、そう考えるよね。
「それが歌とか踊りとかでもいいんだけど、突然神がかったほどのすばらしい何かが大量に現れたら、状況は変わらなくてもすばらしい世界になった、と感じるかもね」
「それを魔法で届けるってできるかな?大勢の人の能力を操作して、作品にする魔法?」
「わー、難しそう、闇魔法になるんじゃない?」
またか、ナナも闇魔法使いだし、光魔法を考えつかないな。
「もしかしたらそんなのんきな状況じゃなくて、もっとこの世の終わりくらいに絶望しているかもしれないよ」
そうか、ずっと怯えていて、気持ちが暗くなっているだろうね。
「なにか、希望の光みたいな、ね」
光魔法になったね。
その話をケント師匠にしてみた。
「希望の光かあ、予言でもっと良くなった世界を見せたらいいのかな、進化するみたいだし」
「それは戸惑うんじゃないですか、いきなり」
「じゃあ、光だけ送っとく?」
なんだかわからない、小さな光を送ることになった。
「シャラナの友達みたいな七色の光の粒を、細かくして送るよ」
さすが、神の子供は自由ですね、効果が全くわからないのに。
「それはそれでちょっとびっくりして、悪いものだ、と思われませんかね」
「光魔法だし、思いつかないんだからいいことにしよう」
わたしとケント師匠のせいで、もう異世界に七色の細かい光の粒が届いてしまった。
何になったのか、まだわかっていない。




