ユキさんの家に行く
翌日、白の塔で着替えてケント師匠の家へ転移すると、そこはもうケント師匠の家の居間だった。
「あら、いらっしゃい、こんにちは、ナディーヤちゃんね?」
ケント師匠のお母さんのユキさんは、あいさつするとすぐにお茶をいれてくれて、座ってお話しすることになった。
「遠いところまで来てくれてありがとう、可愛らしいお客様でうれしいわ」
郊外の大きな農家の家のようで天井が高い、でもここは白の塔の魔術師と宰相補佐の家だよね?ユキさんは優しいお母さんで、焼いたお菓子をすすめてくれた。
「わあ、すごくおいしいです」
ほろほろと口の中にくずれていくクッキーは、木の実の味が濃くてなんだか自然の味がする。
「よかった」
お腹が空いていたからもうすこしいただいてしまう。あっ、違った、そうじゃない、大事な話があるんだった。
「あの、ケント師匠から、星の気持ちがわかるって教えてもらったんですけど」
「ああ、そうね、そう言っていたわ、星の気持ちね、とても優しいんだけど、ちょっと外に出て見てみない?この世界のもので目に見えなかったものがあることがわかるわよ」
目に見えない、いろいろなものが見えるようになっているけど、それとは違うのかな。
ユキさんが案内するために玄関の扉をすこし開けた、その扉の隙間から、ふわふわと光る何かが浮かんでいるのが見えた。これはなんだろう?と思ったときには。
(ナディーヤ、ナディーヤ、ナディーヤ、な、な、なななななんなななん……)
ころがって、なだれのように重なったまま、黄色、水色、桃色、黄緑色、藍色、いろんな色の妖精が扉の内側に舞い込んできた。
「ああ、ぐちゃぐちゃね、これ、わかる?私の畑の野菜の花の中から生まれた妖精なのよ、蝶みたいに舞うんだけど、いつもかたまって家に入ろうとするのよ」
(わああああああ、はいった、わああああああああああ、はいっっっっっっっっっっっった)
「きれいだけど、みんなそれぞれいろんなこと言うからきいていられないの、家に入れないようにしているのよ、気をつけて」
わあ、気をつけられない、ナディーヤ、ナディーヤ、言う声にいちいち返事してしまう、かわいい、きれい、なんてすてきなこの世界の、見えなかったものたち。
ユキさんと扉を開けて外に出ると、そこには桜の木の精霊がいて。
「ナディーヤね?こんにちは、ケントからきいているわ」
透明で桜色の美しい精霊がわたしに話しかけてくれた。
「ユキにわからないことは、私にきいてもいいわよ、長くこの世界にいるから知っていることがあるわ」
透明で桜色の長いドレスは、滝にようにひだが重なって流れているよう、シャラナみたいに日の光を乱反射して、形も色も目ですべてを認識できないくらい、美しい。




