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異世界から来た魔術師  作者: ちゃい
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ナディーヤのよくみえる目

 (また会いにくる)

 シャラナが帰った後から視界がおかしい。


 (わたしをみつけやすいようにしてあげよう、友達だから)

 目をこすってみたけど変わらない、いろいろな物がみえすぎているようだ、今まで何もないと思っていた所にいろいろなものがある。今まで確かにあると思っていたものは、ほどけて崩れやすいものにみえる。


 夢をみた。今までみえないと思っていたもの、人の考えやそこから出てくる力が空気中でゆらゆら浮かんでいる。

 誰かの頭の中から強い考えが出て、空気中のすべての人の頭の中に絵の具のような色をつけていく。水のような人の頭の中は簡単に同じ色に染まる。本人の意思はあるのにあっさり同じ色を受け入れるのは水の性質?そしてシャラナは何にも染まらない七色の光に包まれている。


 水の中ではないのに、わたしの目にうつる人々の身体の中は水でできていて、同じ色に染まりやすくて、汚染されやすくて、不安定で崩れやすくて、海の中のようにいろいろなものがゆれてただよっている。でもひどく傷つけたりしなければ、何かが浄化してくれて、とても護られている。


 これが本当のこの世界なのかな?


 この世界だと勘違いしていた世界が、ほろほろと崩れては再生して、確かにあるはずの建物も木も人も細かく崩れたり再生したりして定まらない、輪郭がぼやけた世界でうごめいている。


 (もともとみんな水の生き物だから水の中で生きている、それは陸でも変わらない)


 「ナディーヤが悪い魔物にとりつかれた!」


 その夢の話をしたら、ナナが闇魔術の教室で大声をあげるからおどろいた。先生は、またおかしなことを言う、と闇魔術の生徒のおかしな発言にちょっと文句を言っただけだった。よかった、闇の魔法使いに変わり者が多くて、あ、わたしたちもそう思われてるってこと?


 「くわしく教えて!」

 ナナは面白い話をいつも探している、これは本当のことなのに。


 「目は視力が落ちると見え方がおかしくなるんだよ、眼科医院に行けば?」

 本の読みすぎで目は悪いけど。


 「眼鏡を作り直した方がいいよ」

 そうかもね、でもそんなことじゃないんだよ、言い返したけどむだだった、ナナに勝てたことがない。


 「見て、シュテファン様たちがまた炎の魔術対決してる、あ、見えないの?」

 見えるよ!


 でもナナほど興味を持てなくなった。見慣れたせいなのかな、シャラナのせいかな。 

 


 

 

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