ナディーヤの力
「ああ、ナディーヤ、ごめん、この方が魔王様からきいていた友達で」
その後すぐにユーリ宰相補佐も転移して来た。
「シャラナだ、ナディーヤ、友となるために来た」
シャラナ、という大柄な女性が目の前にいるのに、この部屋の光の加減なのか姿はゆれて、外れたままのボタンが反射してよく見えない……まるで水の中の映像みたい。
「ナディーヤか、ははは、人間なのに海のものの印がある、わたしが付けた印をこんなところに付けられて、どう繋がってあれがこんなところにあるのかな」
少し暗い小会議室に入り口で、乱反射した光を集めたようなシャラナは、風を大きくぶつけたような深い声で話す。風が話しているようだ、大きな音なのにききとりにくい。
「私はこの国の宰相補佐ユーリだ、南の竜王様の弟子で次期海竜王、シャラナ」
わああ、私の友達?
「ははは、ユーリ、元々人ではないな、陸の竜王の弟子、どうしてそんな細々とした肩書きを作ったのだ?元の姿に戻った方が自然で生きやすいだろうに、まるで二重の生活だ、不自然な生き方をする」
「陸ではこんなこと当たり前で、私は最初から人間だ」
「なんだ?陸の竜王の弟子は人間ではないが、どこかで時の設定がゆがんでいるのか、それからナディーヤも魔力が循環できないようにとめられている、陸の変なゆがみがおかしなことをしているのだな」
わたしの魔力は循環していない?
「シャラナ、ナディーヤはまだ何も知らないんだ、時が来るまで少し待っている」
「時がゆがんでいるのにいつまで待つのだ?」
「それは次元の違う問題で、私の家族が関係して時をゆがめているのだろう、その問題が解決した時にゆがんだ時間が正しく動き出すはずだ」
「なんだそれは、ナディーヤの魔力の循環もそこに関係するのか?」
「はっきりとはわからない、でも私にはいろんなことの全てがそこに繋がっている、としか思えない、シャラナのことも」
「ユーリ、ナディーヤにわたしがよばれたことも、魔王様が声をかけてきたことも、となるとずいぶん時間と手間のかかったことになるが、そういうことか?」
「さすがはシャラナ、そういうことだ」
「それはとんでもないところによばれてしまったな」
二人ともなんだかすごいってことだけしかわからない。
「ナディーヤ、何も言わないがもう友となっているのか?」
「ええっ?」
「そうか、よかった」
わたしでいいんでしょうか?シャラナはうれしそうにふわっ、ふわっと風のような声を出して笑った。




