ナディーヤ、海に潜る
ここから、ナディーヤの視点になります。
パルネリアの港に戻ってきた。
「もう面倒だから、一緒に入って行こう」
最初からそうしてほしかった。
ケント師匠がわたしも入れた丸い結界を海に浮かべた。上手く立てなくてごろんと転がりそうだけど、そこは踏ん張っている。
転がったらケント師匠にも被害が及ぶ。ぶくぶくぶく、沈み始めた。
真っ暗な海の中に沈んでいくのはちょっと怖い。それでもずーっと沈み続けてどれくらいの時間が過ぎただろう。
「この辺りでいいよ」
ケント師匠が教えてくれたところで友達を探すことになった。どうやって?
「来たよって言えばわかる」
「魔王様にいわれて来ました、友となる者ですよー」
何の反応もない。
「ケント師匠、やっぱりいませんよ、きこえないのかな」
「仕方ない、帰るか」
ええっ、ここまで来てこれだけ?誰にも会っていないのに。
ケント師匠は面倒くさそうに、結界を浮き上がらせる。
「十分伝わったはずだ、相手は竜王様の弟子で人ではない、何もかもわかっていて返事がないってことだ」
そうか、簡単に友達になれるわけないよね、ちょっと残念、どんな人か楽しみにしていたのに。浮き上がって港に着くと、すぐに転移して白の塔に戻った。
「ナディーヤはもう白の塔の魔術師でいいね」
ユーリ宰相補佐、何をおっしゃっているのかわかりません。
「ははは、また後でね、研修生の書類を用意しておかなきゃ、明日から毎日、学校の帰りにここに来てね、ミサトには言っておくから大丈夫」
何が大丈夫なんでしょう?白の塔は王立学院の成績上位者3名しか入れないところですよ、ね?
でも報告のためにケント師匠と塔主ジーク様のところへ行った日に、わたしは白の塔の魔術師の研修生になった、と教えられた。研修生ならわたしでも大丈夫なのかな?
「がんばってね」
優しそうな顔をしても、ジーク様は迫力があり過ぎてちょっと怖い。
研修生って何をするんでしょう、ケント師匠はどうでしたか?ときいてみたけど何も言わなかった。
「ここの食堂は学院のランチよりおいしいから食べて行った方がいい」
それしか思い浮かばなかったんですね、そう言うとケント師匠はわたしを小会議室において、自分の仕事に戻って行った。
それなら魔法学校の給食よりおいしいはずだから、お昼になるのを待って食べてから帰ろう。
ひまだな、ぼんやりしてるうちに、ちょっと遠いけど外が騒がしくなってきた。
しばらくお腹が空いてぼんやりしていると、しゅるしゅるっと空気が渦巻いて、突然大柄な女の人が渦の中から現れた。びっくりしたけど、どうしても知りたいことがある。
「わ、その服どうなっているんですか?ボタンが全部外れているのに巻きついている」
「うろこのことか?」
何を言っているんだろう。




