デルちゃんの日常
「デルちゃんってよんでいい?わたしはミサトだよ」
そういうと、
「うむ」
と答えてくれた、かわいい。
翌朝起きてからずっとひざの上に乗せて抱っこしていたら、きちんと背筋を伸ばしていたのが、体を預けてくれるようになった。
おやつを食べる時には、人が口にしたのを見てから。背後に立つ人間は必ず確認してから警戒を解く。何度もわたしの顔をのぞき見るのは、これで合っているのか確認している。悲しいほど体に染み付いている習性なのだろう。
「お姉ちゃんは魔女で、お母さんの代わりだよ」
そういうと、きょとんとした。
もう大丈夫、安心して。そう思っていても何かを強制したくない、ゆっくり大切にしていきたい。
「じゃあ、うちの下の子を連れてきて一緒に遊ばせてみようか?」
ベテラン主婦のハンナさんの一番下の娘、甘えんぼのエレナちゃんも5才だから、友達になって遊べるか?と思ったけど、そうでもない。
「デルネヘル様、こちらへおいでください」
「うむ」
結局、デルちゃんは執事と皇子という関係のまま、ロバートになついた。庶民風の扱いに慣れないみたい。
ロバートの後ろをついて回るひな鳥のような様子がかわいらしい。
お昼やおやつ、お昼寝もエレナちゃんと仲良くするはずだったけど、ロバートのそばを離れない。
「何かききたいことはある?なんでもきいて」
生活が急に変わって困っていないかな、と思ったんだけど。
「私は皇国のためになれるのだろうか?」
5才のかわいいほっぺの男の子の口から出た言葉とは思えずに、きょとんとしてしまう。
「ここにいると皇国のためになる大人になることを忘れてしまいそうになるけど、いいのかな?皇子なのに」
どうしよう、こんなに小さくても、彼は皇国を背負う役目の皇子なのだ。
家族とよべる者が暗殺者をおくっても、国を簡単に捨てることなんてできないんだなあ。
わたしには返事ができなくて、抱きしめるしかなかった。
「いいんだよ」
そういったのは隣できいていたアレクだった。
「俺は大国①の伯爵家の長男だったが、ミサトとすべてを捨ててN国に来た、魔術師としての実力だけで生きていく決心をしたんだ。それなのに大国①にいる時よりも、N国という世界を見渡せる場所にいる方が大国①の危機がわかって役に立つんだ」
「なぜ?」
「外から国を支える人が必要だったんだよ、内にいることだけが国のためじゃない、君は外から国を守る人になれる。魔術師としても成長できるし、ここはとてもいい国なんだ」
「外から皇国を、魔術で?」
「そうだよ、何も心配しないで」




