南の島国の王子
魔王様から保護を依頼された王子様がいる国は、南の島の小国でルパニアという。
「ああ、ネーデリアの隣国で同盟国だね、同じような国なら保守的で昔のしきたりが残っているかもしれないな」
とユーリさんの説明を受けて不安になる。内戦はなく、国内は安定している、と。
じゃあなんでその王子様は危険なのかな?5才のデルネヘル様という。
「ミサトがやる必要ってある?ミサトはだまされてるよ」
フェリクスにだまされたアレクが心配する。
「忙しすぎて痛い目にあうよ、俺はもうそうなってるよ」
どうなってるっていうんだ?
「だいたい俺はどうなるの?かわいそうな子供くらいかわいそうな目に合うよ」
アレクが反対するのはわかっていた、危険だからね、でも聖人扱いされているくせにその発言はどうなの?
「そんなに言うなら俺も行く」
そうきたか。
ユーリさんは静観している。
「私が何か言うと決まっちゃうでしょう、納得できる話し合いをしたほうがいい」
しかし宰相様がアレクの出張に反対した、聖人であるN国の切り札がそんな理由で他国に行く必要はないという。こりゃ無理だわ。
「人気者は大変ですな」
「バカにしてる!?」
そんな家庭内の事情とは関係なく出張の日が近づいてきて、ユーリさんがある程度の資料を用意してくれていた。
「ミサトに丸投げしちゃ悪いから、気をつけて行ってきてね」
呪術が盛んな閉鎖的な皇国。
その国の第三王子が魔力持ちだった。母親は側室で下級貴族出身だから後ろ立てがほとんどない。
それなのに赤ん坊は火を放ったり、水を吹き上げたりと悪魔の所行で何度も呪い殺されそうになっている。
一旦ネーデリアに転移してから、船でルパニアに渡った。親切なネーデリアの属国の領主が案内してくれた。ユーリさんの友人という大柄な男性はネーデリアの英雄で、ルパニアの城内まで付いてきてくれたので、デルネヘル様に難なく会うことができた。
「ありがとうございました」
「ユーリの部下なら私が案内するべきだと思ってね、気にしないで」
なんていい人なんだろう、だから英雄なのかな。そこで別れてデルネヘル様の部屋へ入る。
「お姉ちゃん、誰?」
今年で5才なのに、言葉がはっきりしている。
利発そうな顔立ちで、さっき会ったこの国の皇帝そっくりだ。
皇太子も第二王子も父親似だがこの子より凡庸にみえる、容姿が美しいのもうとまれる原因になっているのかな。
もう自分で魔力制御してる、わけのわからない赤ん坊じゃないんだね、自分で自分を守ってきたのかー、デルちゃん偉いよ!と抱きしめたくなった。




