魔王様の依頼
久しぶりに魔王城にきている。勇者ハヤトは元の世界に帰った、と報告する。
「ベルリハルト城はかなりの兵を集めていたんだが、勇者が来なくてよかったよ、帰ったならいいんだ。
エルが狙われるなんてことがあってはならないからね、気にしなくてもいいんだ、かなりの費用がかかってね、神殿に文句をいったらN国とセレーシアのせいだってね」
魔王様を人前でもエルっていうんですね、ヒュー・ベルリハルトが文句をいう。
「いえいえ、あれはセレーシア様が趣味で召喚してしまったようですよ」
がんばれ、ユーリさん。
「違うんだ、ヒュー、帰ってくれないか?」
魔王様、ヒューはそんなこと言われたくらいじゃ帰りませんよ。
「ああ、ミサト、アレクシス像の設置を許可してあげたよ、大国②でも見物にいく人が多くなってきている」
それはどうも、ってわたしがいうことなのかな?
「大切な話だからきいてくれないか!ミサトにお願いがあるんだ」
魔王様の話は十分理解できた。
魔力量の多い魔術師の仕事をしている女性で、どの魔法もそこそこ使えて、神殿にも出入りできる。
わたしより上手くその仕事ができる人はいない、とヒューがいうならそうなんだろう。
「だってさ、エルじゃ子供がびっくりするだろう?」
魔王様は魔力量の多い幼児を保護したい、という。
N国以外で、子供の魔法使いは少ない。
だから魔力量の多い子供をどう扱っていいのかわからない親が、こっそり捨ててしまうこともある。神殿に預けるならまだましで、辺境の小国では森に捨てることもあるという。悪魔の仕業としか思えないことをしてしまう悪魔の子供だと思われてしまうのだ。
「特に魔力量が多い子を先に助けてあげないと、もう危ない子がいるのよ」
ほとんどの子はそれほど魔力がなくて、親がちょっと注意してやれば済むくらいだから困った子としてそのまま育っていく。少し魔力がある子は神殿に預けられることが多い。よほどの辺境でなければ、町に神殿がある。神殿は魔法使いの子供を探し出して積極的に保護している。辺境の森には世間からはなれて暮らす魔女がいて、弟子にするために育てている。
一番危ないのは、魔力量の多い王家の王子や王女らしい。
「あれ、この一番上ってグレン様の最近生まれた弟?」
「その子もそうだけど、大国①は安定しているから大丈夫よ、問題なのは二番目の子、その子を保護してきてほしいの」
お願い、と魔王様に見つめられて、はい、と答えてしまった。




