ハヤト
「その魔法陣の中に入って、しばらくすると元の世界に着いているから。わたしの兄が待っているわ、家まで帰れるようにしてくれるから心配しないでね、それじゃ、さようなら」
「ありがとうございました、ハヤトの家に手紙を持って行って剣術の修行してるって報告しますね、さよなら!」
巫女見習いの生活は、現代の女の子にはつまらなかったみたい。異世界にいたことは秘密にしてね、と頼んだけどどうかな、本当のことを話せば話すほど嘘くさいから大丈夫かも。
セレーシアに召喚された少女二人は、元の世界に帰って行った。
「ちょっと!あなた誰?ここで何してるのよ!イーリの家に入り込んでいるなんてずうずうしい」
「あなたこそなんなんですか!人間がイーリさんに何の用ですか?」
イーリの書斎にある魔法陣から、少女たちを元の世界に帰すためにここに皆で来たんだけど、セレーシアも一緒なんだよね。サラとケンカしに来たみたい。
「待て、ミサト!これをどうするんだ?置いていくな!」
「わたしじゃ連れて帰るなんて無理」
じゃあユーリを連れてこい!と叫んでいるイーリを残してN国に帰ってきた。怖いわー、しばらくイーリの部屋には行けないな。
ハヤトはユーリさんと話し合って家に手紙を書いて、騎士団で剣術の修行をすることになった。セレーシアのために勇者として活躍する、と思っていたんだけど、さすがに魔王様を倒すなんていう変な勘違いはなくなったようだ。勇者はこの世界にはいらないんだよね。
ユーリさんはハヤトをレイナード副団長に預けたんだけど、どんな様子か騎士団の訓練をみに行っているから、わたしもこれから見学に行く。
「あの子は、この世界に来る必要があって来たみたいだな」
ユーリさん、どういうことですか?
そう思ってハヤトをみると、まるで剣が生きものみたいにしっかりレイナード副団長をとらえて離さない。何かの魔術としか思えない。ハヤトの体は剣の一部みたいになってふわりと浮き上がっては、相手にすばやく刺さっていく。もちろん、レイナードさんが刺されることはないが、ハヤトの動きは美しくて見とれる。
「なんだろうなー、セレーシアの召喚で来たわけじゃないね、これ」
「そうですねー、動きが神がかってますねー、困ったな」
「困っちゃうねー」
この世界でなんか役割があることはわかるんだけど、どうしよう、帰してあげたいんだけど。
「よくわからないから、しばらく待とうか」
またですか、ユーリさんがそういうならいいんですけどね。




