白い家
N国の王都で安い家を探していたら、魔物がいるとうわさになった森の近くの白い家が売りに出されていた。
「かわいい、気に入ったわ」
「まあまあ!私がずっと管理してきたんですよ、きれいにしてあるから中に入って、さあ」
魔物は気にしない、というと管理人のおばさんが喜んで案内してくれた。通いで料理と掃除に来てくれるという。
「そうなんですか?よかった、よろしくお願いします」
と、あっさりいろんなことが解決する。意外と中は広くて、二階建てだけどお母様が注文した家具が収まった。
「よかったですね、私もこれからよろしくお願いします」
ファンジュール家の執事のロバートの息子、アレクの頼れる兄のような存在のロバート・ジュニアが家の執事として大国①から来てくれた。面倒なのでロバートと呼んでいる。
家政婦として来てくれているハンナさんと、一階の部屋に住んでいるロバート、二階の一部屋だけで十分なわたしたちは少し広い家に住み始めた。といっても昼間はロバートとハンナさんしかいない、ロバートが管理してくれるからアレクと変なすれ違いをしなくなって、ハンナさんの料理に合わせて帰宅するようになったから家族らしくなってきた。最近出張がなくなったのはユーリさんのおかげかな。
「週末に領地をみに行こう」
「そうだね」
家に慣れた頃、ファンジュール家の当主が認めた者だけが治めてきたという不思議な土地に転移してきた。
古いレンガ造りの城だった転移施設から外に出ると、まるで異世界のような景色が見える。
寒くも暑くもなく、どんより曇ったままで薄暗い。生臭いような澱んだ空気が動かないからじめじめしていて、魔物臭いとはこのことか?と思う。
遠くに大国②との国境の巨大な穴があって、魔物の巣が近くにあるのだそうだ。
「大国②の国境はベルリハルトの土地なんだよ、昔からここはファンジュールとベルリハルトが管理している土地なんだって」
え、ベルリハルトって、ヒューの家だ。
「私はこの土地で生まれたんだ、だからちょっと変わっているのかな」
へえ、ヒューとアレクは近くで生まれたことになる、だから魔力量が多いのかな。
「これからは私たち夫婦でここを守っていくんだね」
この魔物臭いような土地で、異世界でアレクと生きていく理由をみつけて、夫婦でがんばっていこう、なんて思うようになっている。




