魔王様の結婚式
ところで、ここまで話が進んでいるし結婚式をしない、で済ませられない魔王様たちなんだけど、どうやって結婚式を挙げるんだろう?
ヒューに嫁ぐなら、王や神殿の許可をもらって誓いの儀式をすることになるはずなんだけど。
彼女は愛らしく、美しい女性でも魔王なのだ。
魔王城での誓いの儀式は他人に見せるものではないので、済ませてあるそうだ。
それでも魔王が、神殿で、誓いの儀式をするなんて無理がある。
「もともと王様への嫌がらせのようなものだからねえ」
前日、ユーリさん、アレクと三人で大国②に来ている。
ユーリさんはそう言うけど、すばらしい結婚式場が完成していた。
まるで空中回廊だ。式場は五階建てで螺旋状の階段で繋がっている。フロアごとに色が違って、外から五色の石の床が光ってみえる。五色の階段にはリボンが長くたなびいていて、ケーキみたい。吹き抜けの一階の中央には、魔王家とベルリハルト家の紋が彫られていて、ここが式場みたいだ。
つまり、王家や神殿ではなく自分たちの家に結婚の誓いの儀式をする、すごい。
祝いのための歌舞音曲の演者が式場前の広場で演奏していて、結婚式場までの専用道路には屋台が出て、各国から観光客が押し寄せている。なんだこれ?
吟遊詩人たちが歌にして伝え歩いている。
大国②の王族だけが苦い思いをしているらしい。こうにぎわっていては、ベルリハルト家が憎くてもヒューに文句も言えない。
当日招待客は式場への転移施設が用意されていた。
外には大勢の人が集まっていて、花火が上がって、色とりどりの花びらが降ってきた。
「わぁっ」と歓声が上がる。
ヒューと魔王様が式場の中央に立つと、さらに大きな歓声が上がって、美しい物語のように花びらが舞い続ける。
結婚式が終わると、各国からの招待客が五階までのフロアでそれぞれ外交を始めたから、ずっとユーリさんを探している。今日は晩までここがパーティー会場になる。
アレクは大国①の知人に囲まれて、身動きがとれないようだ。
ふっと、何もない空間からブルー様が現れた。
「こっちへ」
透明なケースのような小さな部屋に入って、ブルー様とパーティーの様子を眺める。
アレクは結婚しているのに、貴族の娘とその父親の挨拶を受けて困っている。
「大変そうだから」
ブルー様はそう言うと、わたしを別の部屋へ転移させた。
ひゅっと体が移動すると、両手を上げてものすごく困っているユーリさんが魔王様に抱きつかれていて、後ろに苦い顔をしたヒューが立っていた。
まって、あんなに素敵な結婚式の直後から、みなさん何してるんですか?
感極まって父親?に抱きついて、嬉しくて離れられない魔王様、もう二度とない機会なのはわかるけど、やめてあげて!
わたしの出現でひるんだすきに、ユーリさんの手をつかんだ。
「何やってるんですか?行きますよ」
「ああ、ありがとう、ブルー様にはお世話になっちゃうな」
ユーリさんはのんきな声でそんなこと気にしている。




