エルフの里の演奏会
午前中はユーリさんと一緒に村長さんのところへ行って、わたしの仕事の打ち合わせをした。今回は三日間らしい。
「自由に歌ってください、猫の町ではずいぶん楽しくやっておられたようだ」
村長さんのありがたいお言葉だけど、どこまでみてたの!と不安になる。そして今回はヨーカ様がいないから一人になって寂しい。それでもユーリさんに歌わせたりするなんて考えられない、ブルー様ならいいのかといわれたら困るけど。
宿泊所に一人で戻った。ユーリさんはまだ村長さん、イーリのお姉さんと話している。
「衣装はどうしようかな」
前回は抵抗があったけど、ヨーカ様のおかげで助かった。今回は自前の出勤用のスーツしかない。アレクが買ってくれた派手なドレスでも持ってくればよかった。
「あの、ミサトさん、その黒い服なんですか?」
と、なぜか当然のようにわたしの部屋にいるサラがきいてきた。
「私のでよければ、お貸ししましょうか?」
エルフの衣装!いいね、それ。
「ありがとう」
サラは手先が器用な子で、美しい虹色のグラデーションの衣装に次々と飾りを付けていった。
サラはちょっとエマに似ている。
小柄で自信なさそうで、多分頑固なところがあるんじゃないかな。でもケントくんのようにみてる人もいるかもしれない。素敵なサラを誰かがよくわかっている、なんてことがあったらいいね。
小さな顔はよく見るととてもかわいらしいのだ
「ねえ、サラも一緒に来てくれない?鈴と鐘の係がいるの。
始まる前と終わった後にしゃんしゃん鳴らしてくれたらいいだけだから。わたし一人じゃ心細いし困ってたのよ」
「あの、私なんかが、ですか」
「そうよ、サラはわたしの友人に似ているからあなたがいいの。断らないで、お願い、その鈴と鐘はブルー様たちの役だったのよ、光栄でしょう?」
「ブルー様ですか?恐れ多いことです」
「だからあなたもブルー様のような衣装がいるわね、ブルー様はとてもきらびやかな衣装だったのよ」
「きらびやかな衣装ですか、すてきですね」
この子はきれいな衣装が好きみたいだ。
「そうよ、あなたが着るのよ、がんばって飾り付けてね」
二人であわただしく準備をして、夜、森の中、たいまつの明かりがゆらめく仮設ステージにわたしとサラが登場した。
薄絹でグラデーションの衣装が浮かび上がると、幻想的だろうと思ってクリスマスソングを五曲歌った。
声の調子はまあまあだ、鈴の音ともよく合っていた。
歌い終わると、サラの友人と思われる子連れのお母さんたちに囲まれた。初日の反応にしてはいい感じ。
ほとんどの観客は呆然としていたけど。




