エルフの里
翌朝、ユーリさんと島の城からエルフの里へ転移した。
エルフの里っていうからかなり緊張したのに、精霊の森にくらべたら明るい林くらいの森に転移して、道に迷うこともなくイーリの友人として迎えてもらった。
なんと数日前にブルー様がいらっしゃっていて、わたしのことをよろしく頼むといわれたそうだ、ありがたい。
イーリのお姉さんはこれがエルフの美人だというような理想的な美人で、イーリを優しくした感じ。
「イーリは友人というより先生ですよ、わたしの夫がいつも迷惑をかけています」
「まあ、あの子が?人見知りがなおったのかしら」
ところころ笑う。人外の国巡りなんだけど、どうも美人ばかりが登場するな、大国①のレベルは低かったのだろうか。
挨拶まわりが終わって、宿泊所に案内された。
そのエルフの女の人はわたしに付いてくれて、メイドさんのように世話をしてくれた。疲れて簡易宿泊所のようなところに帰ってから眠るまで、ずっと付いていてくれたからそういう人だと思っていた。
美しいエルフの女の人だけどこの中ではわりと地味で、目立たないようにしているのか小さい声で話す自信のない感じ。サラという名前をきいたのも翌朝になってからだった。
メイドさんではないとわかったのは、朝食のとき同じテーブルについて一緒に食べはじめたときだ。なぜかユーリさんとは別々で、自室で食事をしている。
「あの、イーリさんについておききしていいですか?」
サラのすがるような目がアレクに似ている、イーリが好きなの?
「どうぞ」
食べながら彼女のことをいろいろききだした。
小さいがエルフの里には学校もあり学者もいる。イーリの家は学者一家で村中から尊敬されていて、当然イーリも学者になるために、他の子よりも特別な勉強をさせられて育った。友人も頭のいい男の子がほとんどで女の子と話すことはなかった。
サラは家庭的で、自分で頭が悪いといっていたからイーリとは接点のない女の子だった。
「でもずっとあこがれていたんです」
やっぱりイーリが好きなんだ。
それなのに姉のかわりに外国の研究室へ旅立ったまま、全く音信不通らしい。 イーリ……。
当然、特別なエルフイーリくんは里中の女の子のあこがれの的で、クールなところがいいと騒がれていた。
それでも何年かたつと、いなくなったあこがれよりも現実的に結婚していく子がほとんどなんだけど、サラは地味で嫁き遅れたらしい。
「やっと先日イーリさんから連絡が入って、友人が里に来るってきいたんです。だからせめてお話だけでもききたいと思って」
それでわたしに付いていたわけだ。あのイーリに恋愛話か、すばらしい、彼女を連れて帰っていいのだろうか?
「イーリに彼女はいないよ。(アレクは彼氏か、ライバルか?)いつも研究室でなんか難しい勉強をしているけど、行けば普通に話してくれるよ、行ってみない?」
「いや、あの、エルフはあまり外へ出られないのですよ」
「イーリに会いたくないの?」
「私なんか行っても迷惑だろうし」
「お世話係とかいって無理やり出してもらいなよ」
「いや、本当に、会っても私みたいなのは邪魔なだけで…… 」
「好きなんでしょう?」
「あっ、いや、…… はい、そうですね、でも無理です 」
なんかはっきりしない子だな。
その時はそれで話が終わった。




