イーリの家
翌日白の塔に出勤して、猫の国の報告書を簡単に書き終えて(妖精王の方はユーリさんに口止めされている)お昼になったから久しぶりに食堂ではなく、外へ向かった。
がんばった自分のために体にいいと評判のレストランヘ行く。料金は高めだけれど、素材がよくてとてもおいしいらしい。
店内はかなり混んでいた。ふっと窓側をみると見なれた顔がある、一人で来ているようだ。
「アレク、久しぶりー」
隣に座ると、あっ、とかえっ、なんて言いながら口をぱくぱく動かしている、声になってないよ。
「ミサトー」
泣きそうな顔ですがりついてきた、どうした。
「ミサトはいないし、冷たい人ばかり身近にいるし」
イーリと宰相様に怒られろ。
とりあえず頭や背中をなでてあげる。
大国①でのすばらしく評判のいいアレクシス様は故郷に置いてきたのだろう。ちょっとやつれていて、顔つきが鋭い気がする。
「ミサトはどうして音信不通だったの?」
「わたしは定期的に家に帰っていたよ、アレクがいなかったんでしょう、イーリの家に行ってたんだって?」
「う、うちに帰ってたの?」
そんなうるうるした目で見つめられてもね。
「そうだよ」
「会いたかった、のに」
すねるな、女の子か、仕事と私のどっちが大事なの?とか言いそうだな、そしてそれがわたしより似合う。
食事中アレクに言っておいたので、夕方ユーリさんと一緒にイーリの家を訪ねた。
イーリに挨拶すると後ろでアレクが自分の家のように居座っていた。
「明日からエルフの里へ行きたいんだけど、気をつけることって何かある?」
「ユーリが気にすることなんてないだろうね」
イーリはあっさり言った、そうですよね、ユーリさんだもんね。
「君の姉上に会って少し話をしてきていいだろうか」
「ああ、元気にしていると伝えてくれ」
イーリはやわらかい表情になった、冷たくないじゃないか、お姉さんと仲いいんだね。




