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異世界から来た魔術師  作者: ちゃい
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妖精王の城

 白の塔の会議室でヨーカ様と猫になったりして遊んでいたら、ユーリさんにまたすぐ出掛けるといわれた。


 次の出張先のエルフの里へ行く前に、妖精王にあいさつするらしい。


 「せっかくブルー様と親しくなったから、今のうちにね」


 すぐにユーリさんと二人で転移した先は、にぎやかな猫の国とは全く違って深い森の中だった。


 巨木の森は昼間でも暗くて、わざと迷わせるかのように同じ景色が続く。ユーリさんは迷いなく進んで行くけど前後左右がわからなくなりそうだ、目印といっていいものが何もない。


 何時間も同じような所を歩いていると、突然目の前に洞窟が現れた。到着したのかと思って入って行くけど奥が深くてどこにもたどり着かない。


 それでもさらに迷路のような道を進んで行くと、やっと明るい出口がみえてきた。


 洞窟から外に出ると薄暗い森の中に湖があり、光がさしている澄んだ水のむこうに古い城がみえた、絵画のように美しい。


 森を抜けてさらに湖をぐるっとまわってようやく城の入り口に着くと、少し待たされてから中へ案内された。ほんの入り口の小さな応接室のような部屋に入ると、


 「用件は承りました、気をつけてお帰りください」

とあっさり帰されてしまった。これからブルー様に会えるのかと思っていただけにがっかり。


 「今日は城内に入れてもらっただけましなんだよ、ブルー様が話しておいてくれたらしい。了承してもらえれば問題ない」


 ユーリさんはいつもの余裕の表情だし、これはうまくいったほうなのだそうだ。


 普通、なんの連絡もなしに来ようとすると深い森で迷子になって、転移もめちゃくちゃになるらしい。そして誰かの取り次ぎがないと城門から入れない。城内に入って妖精王が所有する部屋に人が入るなんてことは、かなり特別なことだとブルー様に感謝しなければならないそうだ。


 「ミサトとヨーカのおかげだね。ブルー様と面識をもてればいいと考えていたけど、あそこまで仲良くなれるなんて思わなかったよ。精霊が人に心を許すことなんて、まあないから。しかもあれだけ高位で妖精王の側近だ、信じられないよ、会えるだけでも幸運なのに、人などけだもののように思っておられただろうからね」


 ええ、わたしたちがブルー様にしたことは、けだもの並みでしたよ。


 ユーリさんと並んで引き返している。ユーリさんは元々騎士ではないから、疲れたせいかアレクよりゆっくり歩いてくれる。

 一層暗くなってきた、深い森のむこうに夕日が沈むらしい。


 「ここであまり転移したくなかったんだ、歩かせてごめんね」


 森を抜けてもしばらく歩いてから、白の塔に転移して帰ってきた。


 「アレクはミサトがいない間、島の中の城でイーリと一緒に生活していたんだよ。このまま一緒に島へ帰る?」


 「いや、いいです、疲れたから宿舎に帰ります」


 イーリとは島に住むエルフで研究者だそうだ。今日はもう遅い時間だから後にしよう。仕事でしばらく会えないこともあるよね。会ってもアレクは仕事のことをよく思っていないだろうし、この仕事をやめるつもりはない。


 アレクは誰にでも好かれるから、うまくやってるよきっと。




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