アレクの仕事
「なにしてるの?」
「あ、ミサト、この荷物を持って出て行くのかと思ったら、中身を見たくなって、そしたらこれが」
急いでひろって抱き上げた。皆無事でなによりだ。
「猫ちゃんたちになにしてるのよ、これがなに?悪いの?」
「あの、よかったって思ったら、力が抜けた」
え、それでずっと猫を散らかしたまま座っていたんだ?
「今日わたし、水と火を出せるようになったの」
「そう、よかったね。今日、N国の現状についての説明を受けていたら、気分が悪くなった。ユーリさんはすごい。だから自信がなくなって、ぐったりして、こんなことした」
どうしてそうなるのよ。
「とにかくこの猫には、今後一切手を出さないでちょうだい」
「わかった、ごめんね」
十日くらいすると、アレクがやつれてきた。元気はない、暗くてどんよりしている。
この会社俺に合わないからやめようかな、って思い始める頃なのかな?元が貴族だからなー、ダメだよがんばらなきゃ。
せっかくよんでもらってわざわざこの国に来たんでしょう、もう帰れないんだから、泣かないで。
なんてことを、きいているのかいないのかわからないがアレクに言ってみた。なぐさめと応援のつもりだったのに。
「ミサトだけお花畑在住の姫みたいだね、のん気なところも嫌いじゃないよ」
と冷たく言われた。何?なんかくやしいんだけど。
とりあえずN国では、宰相補佐を二名置いている。アレクに引き継いだらユーリさんは辞めるらしい。
最近はずっとアレクに付ききりで教えているから、ケントくんとわたしのようだ。ユーリさんはきびしいのかな?
「ユーリさんは、アレクにきびしいの?」
「ユーリさんは神だね、一人で世界を操っている。宰相様がN国から世界をみているとしたら、ユーリさんはなるべくN国にいいように全体をうまく転がす神みたいな人だよ」
「へえ、すごいことができる人なんだね」
「人脈と人望もある。どっちが宰相なのかってくらいで、俺には無理。もうね、人としての器が違う」
「しょうがないよ、アレクだもん」
「そうだよね、そうなんだよー」
アレクは自分が神ではない、と認めるのに十日かかった。わたしなら一秒で違うってわかる。
「早くいってよー。アレクが神じゃないなんて十日前に教えてあげたのに」
「うわあ、もうやめて、恥ずかしい」
アレクが神ではない、と気づいたお祝いに、ピンクのお酒で乾杯した。へろへろになりながらげらげら笑って、ソファ付近に二人で朝まで沈んでいた。神ではないばかりか人としてもかなり低レベル。
翌日の出勤は体力的にきついものがあったみたいだけど、精神的にはふっきれたらしい。しばらくみていなかった、外面のへらへら笑いがでてきていた。
軽薄そうに笑うの得意だよね、似合っているし。
人当たりがよくてなんでもそつなくこなして、それから優雅に動くんだっけ、アレクの評価、それが戻っている。
「父さんが困ってたよ、ユーリ宰相補佐を辞めさせてはいけないことがよくわかりました、ってアレクさんが宣言したらしいよ」
ケントくんがめずらしく家族のことをいう。
「で、アレクはどうなるの?」
「どうもしないよ、このまま研修を続けるだけ。アレクさんが宰相補佐なのは変わらないから」
「でもアレクって外交できるの?」
「外交じゃなくて宰相、国内で宰相になるための補佐なの。父さんがうやむやにしてるけど、外交は外交員がやるんだ」
「あら、そうなんだ」
「そういうこと、その研修ね」
「はっ!ちょっとまって、うちのアレクが宰相?むりむり、何いってるの」
「元々そのために無理やり危険をおかして大国①に行って、俺までかり出されてやっとよんだんだよ、気づいて」
「アレクにそんな事できると思ってるの?いいのは見た目だけ、だまされてるよ」
「ミサト、それやめてあげて、外見もいいし能力もある人だって教えたことあったよね。
魔力量でいえば宰相様よりあるし、大国①の外交員としての能力は、一番警戒されていたんだよ、敵にしておくのは怖いから味方にしたんだから。家の父さんを離さなかったのも評価していいよ、カンがいいんだよ」
魔力量があってカンがいい?それと見た目のよさだけアレクが評価されているのかな。
かなり心配。




