宰相補佐
「ようこそアレクシス・ファンジュール室長、夢のようですよ、あなたがこの国に来てくれるなんて。私が本当に何年も待っていたのを知っていますか」
宰相様は一見普通の人にみえたけど、誰よりも圧力をかけられてしまう感じがある。にこやかなのに笑っていない、じわじわくる冷たい機械のような優秀な感じ。
「歓迎していただいて光栄ですが、新人ですのでアレクシスとおよびください。それで私は何をしたらよろしいのですか?」
「あなたには宰相補佐になってもらいます。ユーリには元々無理なんです、嫌々やらせてましたけど、本人も辞めたくてしかたないらしいんで。あなたのような、魔力量があって頭のいい、ふらふらしてどこかへ行かず、なんでも否定して仕事放棄したりしない、きちんとした人をどれだけ待っていたか」
宰相様の真剣さが怖い、アレクは顔色が悪い。
「え、ちょっと待ってください!N国へ来ていきなり?私でいいんですか?何もわかりませんよ、無理でしょう」
「もちろん研修後ですが、元々ユーリが嫌々やっていたような仕事ですから、いてくれたらそれでいい」
宰相様の真剣さが増していって、アレクは小さくひっ、って言った。男の人に迫られやすいのかな?
嫌々ではあるが了承して、書類にサインさせられていた。今日は顔見せだけで、明日から正式に出勤するらしい。
宰相室から出ると、ほっとした。肩がこって、あんまり来たくない所だ。
「はあー、何これ?どうしてこうなった」
「アレクシス・ファンジュール室長の威力?」
「わかって言ってるの?ミサトは何もわかっちゃいないね」
その後白の塔に戻ると、結局ケントくんの案内で歩いて王立学院の魔術科に来た。
わたしは魔術師のカーク先生のところで、研修生としてお世話になることになった。カーク先生は黒髪でやせていて目付きの鋭い、いかにも研究者といった感じで神経質そうだ。
「ケント、会いたくなかったよ」
「そうですか?彼女は魔法を一切使ったことがないので、最初からお願いしますね」
「なんでそんな子連れて来ちゃったの?魔法学校へ行ってよ。とりあえず検査からね」
「はい、ミサトです。よろしくお願いします」
「じゃあ魔力量を測定するよ、手を機械にのせてー。ケント!この人誰?振り切れるんだけど」
「ミサトさんだよ、アレクシスさんもどうぞ」
「ケント、ミサトさんとアレクシスさんは、測定機を振り切る魔力量でした。どんな人たちなの?」
「俺もやる?」
「やめなさい、わかった、白の塔の魔術師だからね。じゃあどんな魔法が使えるのか調べるね」
「んー、ケント、この人たちは何?」
「ミサトさんとアレクシスさん」
「全部使えるんだ、ケントと同じだね」
「あ、ミサトさんは異世界人」
「もう驚かないよ、たぶんミサトさんにはまだおまけの何かがあるね、アレクシスさんは宇宙人?」
「大国①から来た魔術師、秘密だけど」
「あーもう、簡単に国家機密バラすのやめて。ききたくないし、関わらないからね」
「もうきいたから無理だよ」
「ケント!二度と来ないでね。あ、えーっとアレクシスさん、大国①の。本来なら学院教師などとは関わりのない方だとは思いますが、N国の予備知識とでも思って少しきいてください」
「はい」
「まずこのケントですが、厄介な人間という意味では誰にも負けません。この世界一の魔力量の持ち主です。そしてご覧のようにものすごく自由な性格です。
これがそうしたいと思えば、今すぐこの世界が滅びます。そしてもう一人、これの父親のユーリにもその力があります。
ケントとユーリ親子がN国の最大の兵力で、一番の秘密です。そして誰にも従わない」
「ほぉ、大国の兵力など、どれだけ増強しても無意味でしたか。技術や財力など関係ないわけですね、私は何をしていたのかと反省するしかない。
ではなぜ攻めない?大国など支配下に置けるはずだし、N国が優位に立てば、すべてうまくいくでしょう」
「自由なんです、やりたくない、が理由ですよ」
「そんなことでN国は小国扱いですか?」
「大国①では評価が低いですか?」
「いいえ、少なくとも私は、あなどっていい国だとは思っていませんでした。ただ兵力と財力が劣っているという判断で外交をしていました。
この情報は決して外に出せませんよ、ケントくんをどうして外へ出すんですか?ありえない」
「ケント、アレクシスさんの言うとおりだよ」
「俺?俺は新人魔術師だから、文句があるなら父さんとレイナード副団長に言ってよ」
「N国のユーリ宰相補佐かー、全く読めない人ですよね」
「ユーリはN国人からみてもわかりませんよ」
アレクはカーク先生と話が合うようだ。アレクって私について来たのに、すっかりN国人みたいだ。
入学手続きはカーク先生が手配してくれるので、明日書類にサインをしてから訓練に通う。ケントくんがしばらく付き添いで来てくれることになった。
「なんでケントくん?」
アレクとカーク先生がものすごく嫌そう。わたしは知らない人よりずっといい。
「俺、魔法使うのすごく上手いよ。これだけは自慢できるんだけど、その評価は高くないんだよね」
「ケントは別のところで目立つからだよ」
「ミサトに認めてもらえるようにがんばるよ、本当に上手いから安心して」
アレクは納得してくれないけど、わたしに不満はない。




