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1話 クトゥルフさん、追放される

初めまして、タンポ一閃と申します。

初の投稿となります!


今回は導入のバトル回となります。

次回からほのぼのが進行していきます!

 暗雲立ち込め雷鳴が鳴る。


 強風が巻き起こり、大雨が大地を打つ。


 地は裂け、本来そこにあるはずの森林は無残になぎ倒されている。


 川や谷は崩れて、山はまるで削り取られたかのような不自然な形で抉られている。


 そこに生物の気配は一切なく、あるのは砕かれた生命の残滓のみ。


 まさにこの世の終わりのような、終末がごとにき光景がそこにはあった。


 そんな中、対峙する影が二つ。


 かたや、頭部は人間とタコの中間、まさに悪魔のような風貌をし、隆々とした人間の上半身に、タコやイカといった頭足類の触手のような下半身を球体状にまとめ、蠢かし浮遊する。


 全身は黒々と滑り、知性ある生物が見れば、その瞬間に精神が蝕まれる異形の怪物。


 この地球という星を破壊によって支配する悪しき神『邪神』。


支配者(グレート・ワン)』の内が一柱。


 水を司る権能を持つ者、


 その名は『クトゥルフ』。


 かたや、クトゥルフと近しい外見をしているが、その瞳は黄金色に輝き、全身は白い鱗のようなもので覆われている。


 背には白き翼を広げるそれは、神々しさすらあるその異形。


 この星の生命の起源。


 グレート・ワンより太古に生まれし始原の神。


 長くからこの星を見つめてきた守護者達である古き神『旧神(きゅうしん)』の内が一柱、


 その名は『クタニド』


 その二柱が今ーー激突する。


 ◇


「GGaRAAAaaaaAaaa!!!」


「GUuOOoOooooOoo!!!」


 百数十メートルを超える巨体同士が、生物では凡そ正常に聴き取ることができないであろう咆哮を上げながらぶつかり合う。


 さながら山と山の衝突。


 それだけで周囲の木々は吹き飛び、大地にヒビが入る。


 天変地異が如き存在。


「GAaaAAAa!!!」


 クトゥルフはもつれ合うなか、唸りながら鋭い爪と水かきのついた腕を振るう。


 それだけの余波で周囲の木々がまるで木の葉のように吹き飛んでいく。


 それは一介の生物にとって死の具現化のような一撃。


 しかし、それをクタニドは悠々と片腕で受け止める。


 そしてお返しとばかりにクタニドも拳を振るう。


 クトゥルフもそれを軽々と正面から受け止める。


 殴り合いの応戦。


 一見すれば激しいインファイト。


 だが、お互いに理解しているのだ。


 これはただの前座であると。


 小手調べ、準備運動のようなものなのだと。



 互いに距離をとる。


 あたりが嵐の音に包まれ、二つの怪物は見つめ合う。


 互いに力量の探り合いが終わった。


 ならば次に繰り出すべきは…


 その時、二人の間に雷が落ち、地を裂いた。


 まるでこれが始まりのゴングだと言わんばかりの、決死の戦闘の始まり。


「OOooOooooAaAAAaa!!!」


 クトゥルフが咆哮する。


 それと同時に周囲に存在する水の動きに変化が生じる。


 今まで降っていた大雨が止まり、雨によって水分を含んでいた大地が一瞬で乾き上がっていく。


 まるで今まで水など何処にもなかったような、幻覚でも見ていたのだろうか、というような異常な景観の変化。


 そしてクトゥルフの頭上に形成される巨大な水球。


 クトゥルフは周囲一帯の水全てを瞬時に集束させ、水球を作り出したのだ。


 さらに、膨大な水量の塊を圧縮していく。


 自身と同程度の大きさの水球がみるみる小さくなっていく。


 そして逃げ場を失った力の奔流が行き先を求めて荒れ狂う。


 水球の中は爆発寸前。


 水を司る存在でさえ抑えが効かなくなるその限界のギリギリ。


 溜めに溜めた水球をーー解放する。


 その瞬間、まるで極限を超えてまで弦を引き絞った矢を放つが如く、凄まじい圧力の奔流が超水圧の激流となってクタニドに向かって放たれる。


 目を離すことなど許されない速度。


 直撃してしまえば神であろうと致命となる必殺の一撃が大地を削りながら突き進む。


 …しかし直撃の瞬間、クタニドが消える。


 着弾地を見失った水線は後方はるか彼方の山を貫く。


 そしてーー山が縦に割れる。


 山だけではない。


 発射地点から山まで目掛けて、さながらモーセが海を割ったように、陸が割れていたのだ。


 クトゥルフはすぐさま態勢を立て直し、体を横に逸らす。


 逸らした瞬間ちょうど体のあったところを淡い光に包まれた鋭い鉤爪が通り抜ける。


 衝撃で地が悲鳴を上げる。


 横を見ればそこにはクタニドがいた。


 その巨体での高速移動。


 この世の法則を完全に無視した法外の動き。


 それに対応したクトゥルフだったが、大技を撃った後。


 動きが鈍くなっている状態の致命的な隙、それを逃すほどクタニドは優しくはない。


「UuoOOOOoooOooo!!!」


 クタニドは自身の腕に触手を束ね、豪腕へと変化させる。


 その大きさはまるで山のよう。


 威圧感は絶死の一撃。


 ーーまさに神の鉄槌。


 クトゥルフはすぐさま対応する。


 自身も触手を何重にも束ね盾とする。


 人の身では決して打ち破れない堅牢な壁。


 クタニドは構わずその豪腕を振り下ろす。


 ーー激突。


 凄まじい衝撃波が辺りを襲う。


 瓦礫や残骸が残らず吹き飛び、周囲一帯が爆ぜていく。


 踏ん張る地面が蜘蛛の巣状にひび割れて陥没する。


 ギリ…ギリ…と拮抗するがそれも一瞬。


 豪腕が壁を打ち砕く。


 あまりの衝撃にクトゥルフは一度地面に叩きつけられ跳ね上がる。


 そこをオマケだと言わんばかりにクタニドが追撃する。


 振り下ろした豪腕をまるで鞭をしならせるように打ち上げる。


 ーー直撃。


 大気が震えるほどの二撃目。


 巨大な豪腕に打ち据えられた巨体は、まるで冗談のように吹き飛んでいく。


 大地を削りながら、それでも勢いは一切衰えない凄まじい力。


 はるか彼方へ吹っ飛んでいくクトゥルフ。


 クタニドはその後を鋭く睨みつけながら追跡する。


 ◇


 既に豪腕を受けるために差し出した触手はボロボロであった。


 半分はズタズタになり、酷いところは千切れ飛んでいた。


 そんな状態でありながらも追撃してくるクタニドの攻撃を退ける為に無理矢理にでも動かし続ける。


 ーー圧倒不利。


 しかし、クトゥルフは薄い笑みを浮かべていた。


 自身は水を司る存在。


 本来は陸地で戦うものではない。


 今回はクタニドの強襲によって陸地での戦闘を余儀なくされたが挽回のチャンスはまだある。


 クトゥルフは攻撃を避けながら後退しさらに加速する。


 目指すはクトゥルフにとって圧倒的優位なフィールド。


 そこにさえ着いてしまえば旧神を相手取ったとしても対等以上に戦える。


 それはもはや眼前にまで迫った広大な海である。


 クタニドの攻撃は更に苛烈さを増していく。


 回避を誤れば致命傷は免れないだろう。


 だがこの調子で回避に専念していけば問題ない。


 こちらの体力が尽きる前に海に着く。


 余裕そして慢心。


 故にクトゥルフは自身の真上に迫る、死角からの攻撃にまでは対応は出来なかった。


「!!!」


 飛来する金色の槍。


 それに気づくのはすでに自身が槍に穿たれ、大地に縫い付けられた後であった。


 抜こうと思っても抜けない。


 いや、それどころか体の自由が利かない。


 クトゥルフは混乱の渦中にあった。


 もがく最中、槍に見覚えのある印が刻まれていることに気づいた。


古き神々の印(エルダーズ・サイン)


 それを扱える者はただ一人。


 その槍の所有者に思い至ったのと同時に頭上から声が聞こえた。


「カッカッカッ、油断は禁物ぞ。クトゥルフよ…」


 それは白い髭を携えた人間の老人のような外見であり、右腕が銀の鎧に覆われている。


 周囲はイルカや鯨といった哺乳類が舞っており、そこ背には円形の幾何学模様を背負っている貝殻のような形をした歪な戦車に乗った者。


 名をーー


「NooODEeNsssSS!!!」


 クトゥルフは憤怒を募らせながらその名を絶叫する。


『ノーデンス』


 星の護り手である『旧神』の内が一柱であり、そして支配者であるこの身を"封印"することのできる唯一の旧神である。


 本来ならノーデンスは支配者『ニャルラトホテプ』によって封殺されていたはず…何故ここにいる!?


 と、クトゥルフは困惑する。


「不思議そうだなぁ。あやつは先に逝ったぞ…だが安心せい。貴様もすぐに送ってやる。」


 凍てつくような瞳を向けてそう口にしながら、ノーデンスは銀腕を振るう。


 そうすると後ろの周囲を舞うイルカや鯨が帯電しながら大小様々な槍に変化する。


 その槍はクトゥルフの周囲を一定の間隔をおいて刺さっていき、巨大な五芒星を描いていく。


 それは十中八九、巨大な印を展開し自分にとどめを刺そうとしているのだろう。


 完成してしまえば一巻の終わり。


 しかし、槍を放っている今のノーデンスは無防備な状態。


 海が近いこともあり地中に仄かだが水の動きを感じる。


 この身は動かすとも、水は操れる。


 地中から水分を引き上げ、自身の懐に水弾を生成する。


 決して悟られないように…確実に一撃で仕留める為に圧縮していく。


 溜める、溜める、溜める…そして


 ーー今。


 クトゥルフは天に向かって水弾を放つ。


 確実に屠れたという確信。


 しかし、衝撃の連続でクトゥルフはこの場にもう一柱の旧神がいることを忘れていた。


 水弾の軌道に現れたクタニドは腕をしならせ水弾を叩き落とす。


 落とされ地面に叩きつけられた水弾は轟音と共に巨大なクレーターを作り上げる。


 クトゥルフは苦渋に顔を歪める。


「GAAAaaaAa!!!GAARaAAAAaaA!!!」


 のたうちまわり咆哮する。


 最後の必死の抵抗をするクトゥルフ。


 地面はひび割れ陥没していくも、槍は固定されたように動かない。


 その間も絶え間なく降り注ぐ槍。


 ノーデンスは暴れるクトゥルフを油断なく見つめながら言葉を投げかける。


「まったくやってくれる、危うく屠られるところぞ。」


 槍の雨が降り終わる。


「生憎だが、詰みだ。貴様らはやはり厄介だ、最早この地に封印するだけでは事足りん。」


 見上げればノーデンスの背後には白銀の輝きを放ち、五つの五芒星が彫り込まれた巨大な槍が。


 今までの槍とは一線を画すその姿は最早槍というより重厚な大剣。


「この槍はちと特別製でな…制限はあるが貴様ら邪神どもを彼方の地、"次元の牢獄"へと追放するために作り上げた物ぞ。」


 "次元の牢獄"その名称を聞いてクトゥルフは焦る。


 それは次元と次元、世界の狭間にある虚無の空間であり、出口も入り口もない、理から完全に外された場所。


 神でさえ入ってしまえば逃れることの出来ない不可視の領域。


 抵抗する間も巨槍の輝きは強まっていく。


「さらばだ、我らが仇敵。すぐに他の者どもも送ってやる故。」


 そして振り下ろされる腕と飛来する槍。


「GAAAAaaaAAaAA!」


 クトゥルフは咆哮を上げながら暴れ続ける。


 ノーデンスも油断なく見つめながらもその心情は確実な一手によって慢心していた。


 ーー故に双方ともに気付かない


 五つある五芒星の内一つが不自然に歪んでいる事にーー。


 轟音と共にクトゥルフの体を貫く槍。


 辺りが閃光に包まれていく。


 ボロボロと崩れていく意識。


 クトゥルフがこの世界で最後に見たのは地平の彼方まで続く海であった…

ここまで目を通していただき感謝です!

作中で不思議に思う事があったと思います。

そこで少し補足を


クタニドとクトゥルフは何故似ているのか?

…クタニドとクトゥルフは従兄弟だそうで外見が酷似する点が多いのです。性格みたいなのは完全に善悪真逆ですが。


クタニドの能力は結局なに?

…クタニドの能力に関してですが調べてもハッキリとせず、全体高水準のバランサー(物理)みたいな強さに落ち着きました。


ノーデンスが強い理由

…本来なら大分弱かったりする旧神ですが、邪神達を追放して貰う為に強さを引き上げて描かせていただきました。ちなみにギリシャ神話のゼウスとの関連性もあるみたいなのでいい感じカナ〜と(言い訳)


わざわざ強くするなら何故ノーデンス?

…彼は神話内において支配者達の封印の番人として登場しているので彼が適役かと。

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