プロローグ2
プロローグ1とは別視点、違う場所です
……ここは、どこ。
私……が誰なのかは幸いわかる。どうやってここまで来たのかはわからない。
周りにはビル、ビル、ビル。右も左も、近くも遠くも見える建物は高層ビル。
道の真ん中で立ち止まっている私を迷惑そうによけていく人々。こんな人ごみ、よくみんなぶつからずに歩けるわね。
心の中で文句を垂らしながら道の端に行き、左手首に着けていたブレスレットに顔を近づける。
これはただのブレスレットではない。代々私の家に伝わっているもので、もう一つある。一方からもう一方へ、通信ができるのだ。
「ちょっとお父様。どういうことよ、ここどこなの?」
『さっきも言っただろう、お前は任務を果たすまで戻ってくるな。それにそこがどこかはお前もよく知っているはずだ』
嘘、そんな、まさか。じゃあやっぱりここは――――人間界。
「お父様、やめて。無理よ、こんなところで任務なんて。聞くところによると、ここでは痴漢や通り魔事件なんかが起こるのでしょう? 強盗や殺人も」
『ああ。だがたかが痴漢くらい我慢しろ。経験の一つだと思え。通り魔や殺人事件も確かにある、だがお前は大丈夫だ』
大丈夫って何よ、こんなところに私を放り出して。
反論しようと口を開くと父の声がそれを遮った。
『お前は死なない。その根拠は、――わかってるな』
「…………はい」
私は死なない。だが、父の思っているのとは違う理由だ。私は死なない。死にたかったとしても死にたくなかったとしても、死ねない。
『じゃあ何も問題はないだろう。いいか、二年以内に任務を終わらせろ。それからなるべく連絡は寄越すな。無駄な報告など聞きたくないからな。この通信も切るぞ』
「ちょっ……」
ぷつっと通信を切られる。
父はやっぱり勝手。なんであんなのを信頼するやつがいるのか理解できない。
建物の壁にもたれてずるずると座り込んで目を閉じる。
お母様。今どこにいるのか、どうしているのかもわからない、お母様。あなたがいたから私がいるのよ。
お母様と似てることはあまり嬉しくないけれど(私は母のことを知らないけれど、母を知ってる人にたまに言われるのよ、そっくりねって。)、私が家から追い出されてないのはお母様と似てるおかげね。
でも。――追い出されるのと、人間界でこんな任務をするのと。どっちのほうがマシなのかしらね。
「……あの、大丈夫ですか?」
「…………あ、ええと」
「具合悪そうですし、よかったら僕の家で休んでいきますか? 病院なんです、僕の家」
声の主はいかにも人のよさそうな青年。
そういえば人間って、知らない人にはついて行っちゃいけないって教えるくせに、具合の悪い人とかに普通に声かけるらしいじゃない。どっちが正しいのよ、全く。
「……あの……本当に大丈夫ですか? 救急車呼びます?」
本当にも何も、私大丈夫とも大丈夫じゃないとも言ってないじゃない。
とりあえず首を横に振って立ち上がった。
眩暈がして足元がふらつく。
青年が私の腕をつかんだ。
「やっぱり病院に……」
それ以上、近づかないで。早く、私から遠ざかって。私そろそろ限界、このままだと、
――私の意識はそこで途切れた。
タイトルは仮です、いいのを思いついたら替えるかも。
基本的に、一週間に二話のペースで投稿していこうと思います。
よろしくお願いします