これからの君の幸せを希う
冬が、近づいてきたような少し凍てついた風が開けている窓から吹いてくる。それに少し背中を押されたように俺は息をついて覚悟を決めた。
「さよならだ。」
そう言って包んでいた手を離した。それが、俺との別れだと自分のなかでけじめを着けていた。
お前のそんな顔を見たくてそうしたわけじゃない。お前は、眉間にシワをよせてバカなことをと言うように俺を見る。
愛してたし、お前とのこれからも考えてた。お前の俺以外に見せない笑みや、俺にだけみせてくれた様々なこと。出来れば、少し広めなリビングで二人で買いにいったログにでもすわって他愛ないことを話したり、お前の好きな映画でも見て過ごしたりとこれからの事に思い馳せて………………
でも、お前との事を考える度にその先からは見えなくて、だから俺はお前との別れを決めた。
そんなことは建前だとわかっていたのに。それが俺の意思だと言い聞かせて…………
溢れそうになる涙をこらえてもう一度言葉を紡ぐ。
「別れてほしい。」
頼むと、懇願するような目を向ける。お前は口を強く結んで拒否する。それでも頼むように頼んだ。
何故と、どうしてと静かに聞かれた。俺はその問に答えることなく口を結んで、何も言わず俯いた。
そうして、何十分何時間経っただろうか。お前はもういいと吐き捨てるように俺に向かって言い、扉から出ていった。
扉の閉まる音をきいて、俺は堰を切るように涙が溢れた。声は出ずにただ涙だけが頬に伝う。
好きだった。愛していた。ただお前だけを愛していた。俺の思いは張り裂けそうに膨らむ。
あぁ、ありがとう俺と一緒にいてくれて。ありがとう、俺に大切なものをくれて。
そうやって、涙をながし続けた。