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僕を受け入れてください  作者: 中村アヒル
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結局のところバケモノにビビって草むらが揺れただけで息が止まる思いだった。

おかげで一睡も寝ないで異世界の朝を迎えた。


さーあ明るくなったし早く街に帰ろう。

街の真ん中にあった巨大な樹が見えるからそれを頼りに戻れるはずだ。

……街に戻ったとしても帰る場所なんてないけれど、ここよりはマシだ。

今の現状から言えば、言葉もわからないし、お金もない、おまけに異世界にきてから何も食べていない。……流石に詰んでる。


普通の異世界ものだったらチートの能力で強いモンスター倒して街で英雄扱いされてカワイイ女の子達に囲まれてハーレム生活じゃないのかよ。

この世界にきてから身体に異常なんてないし多分チート級の能力なんて授かってないのだろう。

「あーチート能力が欲しい」

そんな叶いもしないことを呟きながらトボトボと街を目指した。



街に戻ってきた。さいわいモンスターには出会わなかった。

今いる所は市場なのか朝早くから賑わっている。

市場を歩くと見たことない食材が並んでいる。


トゲトゲとした野球ボールくらいの青い物や

緑色の三日月型の物までいびつな形がいっぱいある。

あとは四角い箱みたいな黄色の果物。それを割ると中から甘い匂いと赤い色で蜜みたいにトロトロ果肉が零れ落ちる所をお客さん見せている。


あっちはお惣菜だろうか。大きいお皿に美味そうな匂いの品がカウンターにギッシリ置かれてお客さんを招いている。


「全部うまそー。腹減ったー」

ギュールルルと腹が鳴る。

だが一文もない僕はつばを飲み込み市場をさった。


しばらく歩いてみると繁華街なのか凄く混雑した場所にきた。

凄くデカイ樹がよく見えるココがこの街のシンボル…この国の中心なのだろう。


まるで夢のような世界だ。近未来的な世界と幻想世界が入り混じっている。

近未来的言えば、テレビみたいな四角い板があちらこちらを浮遊しながら映像をながしている。樹の方を見ると樹の周りを登りながら電車のような物がいくつも走っている。


幻想世界で言えば人。見たことない種族。

魚人族もいるし、植物が動いているし、妖精みたいな綺麗な羽根が生えた女の子までいる。


非現実的な世界をみて気分が悪くなってきた。昨日から寝てないし、お腹が空きすぎるせいなのかも知れない。

もともと現実世界でも人混みが嫌いだからもっと静かな所で休もう。

大きな樹から離れるように腹をさすりながら歩いた。


樹とは反対方向に歩き昨日走った水路の近くにきた。

橋を渡り右に曲がると公園がある。

もう限界だ。頭がクラクラする。そこで休もう。

公園には噴水や見たこともない遊具などがあり、遊具で子供たちが遊んでいた。

階段を上がると広いスペースに銅像があった。僕と同年代の男が立派な鎧を来て剣を上にかざしている。

銅像になるくらいだから、凄い人なんだろう。


銅像の周りにはベンチはあるが老人やカップルらしい二人組が座っていてベンチは座れない。

仕方なく僕は銅像の横に横たわり少し寝ることにした。


もう何もしたくない。はやく元の世界に帰りたい。母さんの唐揚げが食べたい。

そんなことを考えながら疲れ果てて寝てしまった。



…ゴソゴソ…


「ララ!ヨーヨ。ミウマ!」


身体を触られている。小さい子供の声だ。

目を開けて見ると女の子が僕をじっと見ている。

女の子は5才くらいの子供でローブ見たいものを着てフード被っていた。

「シタハモ?」

大丈夫?って言っているのだろうか。首を傾げて僕に尋ねている。


「大丈夫だよ。じゃなかった。何を言えばいいんだ?そうだ…シタハモ。シタハモ!」


全く大丈夫じゃないのに子供に心配されてたくないと思って大丈夫と言ってしまった。


「リタ!エモナーラシッカエヤ!」


大きな声が聞こえた。声の方を見ると子供と同じローブを着ている女性が立っていた。フードで表情が見えなかった。


「ララ!ヨーヨミウマ!」


女の子が僕を指をさしてララって人に聞いている。


「メッセ。ナルカジャハーク、●△◇”@#」


うまく聞き取れなかったが今すぐ僕から離れなさいって言っているのがわかる。

凄く怒った言い方をしているからだ。

多分この子の母親なのだろう。

子供の方に近づき手を差し出し帰ろうとしていた。


「アッテ…ヨーヨー…」

母親の手を握り寂しそうにこちらを見て

「ナナルー」

バイバイって言ってるのだろう。手を振っていた。


母親は僕に会釈して子供を連れて帰ろうとした。


ちょっと待て、このままでいいのか?このままあの親子を逃したら本当に死んでしまう。せめてご飯だけでも食べさせてもらいたい。


それにあの子供の声。間違いないあの声だ。

この世界くるきっかけになったあの声だ。

もしかしたら元の世界に帰れるかも知れない。


「待って!」


腹の底から叫んだ!


親子が振り返ってくれた。


「お願いです。僕に…僕にご飯を食べさせてください。」


フードを被っていたが困ってる事はわかった。


言葉が通じないんだ仕方がない。

どうしたらいい……そうだ!


通じるかわからないが両手でパンを口に運び腹をさするジェスチャーしながら必死に「ご飯を食べさせてください」と何度も言った。


「ヌーマルシパシサム?」母親がこう尋ねてきた。

たしかシサムは最初の老夫婦の時も聞いてきた。

またあの言葉を言ってみることにした。

スマホを取り出し[ハールジャアジャバコール]と[ババフィッエターサ]を言ってみた。


親子はまた困っていた。


夜の事を思い出した。また怒って帰ってしまうかもしれない。けどもうこの言葉しか交流手段がない。元の世界で言う土下座の姿勢で涙を流しながらすがる思いで何度も何度も言った。


「ハマアソニータ」

顔を上げると母親と娘が僕の目の前にしゃがみ込んで聞いてきた。

フード脱ぎ「ハマアソニータ」と、もう一度いい少し笑顔で僕と同じジェスチャーをしてくれた。

「ハマア!ハマア!」子供も嬉しいそうに同じく食べるジェスチャーをしていた。


母親が細い腕を僕に差し伸べてくれた。


伝わった…ジェスチャーが通じたんだ。


「ありがとう…ございます。」泣きながら感謝の気持ちを伝えた。

この世界で初めて受け入れてもらえた気がした。

僕は少し冷たい彼女手を握り立とうとしたが叫びすぎとホットしたのか目眩がしてそまま気を失ってしまった。


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