花・愛
僕の名前には心がある
清正心。それが僕の名前だ。
母さんが清くて正しい苗字だからと心と書いてシンと僕に名付けてくれた。
名は体を表すと言うが僕はこの24年間少しも「清くて正しい心」では無かった。
子供頃は心は澄んでいたと思いたい、でも今の清正心は錆びついてカビ臭い。あきらかに名前負けしている。
何でこうなってしまったんだろう?
思い返せば24歳でもいろんな事があった。
小さい頃から絵を描くのが好きで自分で考えたヒーローを書いて母さん見せてた
「あら、かっこいいねーシンちゃんは絵がじょうずね」
その言葉が凄く嬉しくて褒められてはまた絵を描いて母さんにプレゼントしていてた。
やがて僕も大人になり将来漫画家になりたいと願い必死に絵を練習した。
でもいくら努力しても才能と言うものが後から追っかけてくる。
最初は知らなかった。でも「こいつバケモノかよ」って才能を見たとき両手で抱えてた夢がするりと溢れる感じがした。
でも必死に頑張って自分なりの渾身の作品を編集者に見せたとき
「清正さん頑張ってる?これじゃあ全然ダメでしょう?こんなんじゃあ漫画で食っていいけないよ」って編集者に薄ら笑いでそう言われた
…あー頑張ってるよ!必死で頑張ってるよ!
って言いたかった…でも
「すみません…すみません…もっと頑張ります」
ポロポロとでてくる涙を必死に腕で拭いながら謝ってた。
何が悔しかったのだろう。編集者に対してなのか自分の才能の無さに涙腺が緩んだのか今はもう覚えてない。
これをきっかけに僕は絵を描くのを止めた。
僕の漫画家になりたい夢は当然母さんも知ってる
漫画家になる事を辞めると母さん告げると
「そう…シンは悔いがないのなら仕方がないね。
ココまでよう頑張ったね」
言われた瞬間また涙が込み上げてきた
…でもダメだった。
いい大人がボロボロ泣いていると母さんまでシクシクと泣きだした。
「何でなくんだよ」
「ごめんね、母さんも悔しくって、でも本当にシンちゃんは頑張ったよ」と言いながら僕に近寄り頭を撫でてくれた。
半分恥ずかしい気持ちと半分ありがとうの気持ちでいっぱいだった。
でもありがとうが言えないまま2人で泣いていた。
その夜ふと目を覚まし水を飲もうと台所に行こうとしたときまだ灯がついていた。
静かに部屋を見渡すとまだ母さんが起きていた。
母さん目の前にはお菓子のカンカンといっぱいの紙が広げてあった。
子供頃いっぱい描いて母さんにあげていた絵を全部大切にとって置いてくれてたんだ。
母さんは一枚一枚見ては笑み浮かべ、
字が汚いって笑っていた。
母さん僕はもう絵は描けそうにないよ、漫画家になって雑誌に載ったらいち早く母さんに見せてあげたかったのに、喜んでくれて褒めてもらいたかったのにごめんね、母さんごめんね。
水を飲まないまま自分の部屋に戻り枕を濡らしながら母さんに「ありがとう」と呟いた。