遡る。君との通学路
──始まりは高校三年の4月から。
「行ってきます…。」
僕は眠気を堪え、6時ちょっと前に家を出る。学校が遠い訳でもない、部活の朝練って事でもない。僕が家を早く出る理由は、家の向かいの彼女、北咲 茉耶と鉢合わせしない為だ。
小さい頃は2人で馬鹿みたいに遊んだりしてた。でも中学からあまり話さない関係になっていた。このまま彼女とは縁が切れると思っていたけど、高校二年の頃…
「貴志…ずっと好きだったから付き合って。」
って言われて付き合っていた。僕も彼女が好きだったし、喜んで付き合い始めたんだけど、その時から返事は「ん…」とか「そ…じゃあ。」で終わらす。遊びに行こうと誘っても断って僕の部屋でゴロゴロしてる。そして幾らか時間がたったある日
「貴志…別れよ?…ばいばい。」
急に別れを告られて彼女との関係は終わった。
別れた後は母さんに「茉耶ちゃんになにかしたの?」とか学校で噂になったりで、結構疲れた。それから彼女と会うのがすこし気まずいからこうして早く家を出る。
「はぁ…何でこんなに朝からコソコソしなきゃ駄目なんだろ…」
学校へ続く大通りにでてから僕は大きくため息を吐いた。すると後ろから肩を叩かれる。振り返れば親友である君がいた。
「また朝からため息はいて…どうした?」
「いや、すこし前を思い出していてね…転校してきたばかりだから知らないかもだけど、お前が来るまでに色々あったんだぜ?」
僕は君に元カノの話を聞かせた。すると君は「…色々大変だな、モテる奴は。」と巫山戯て返してきた。
「いや、モテねぇから。お前こそ、前の学校でモテただろ?」
「いや、そうでもないんだなぁ…付き合った事無いし。」
まぁそんな事を話しながらいつの間にか学校に着いていた。君は朝練があるからとりあえず分かれることにする。
「んじゃ朝練、頑張れよ?」
「お前もテストの為に勉強しとけよ?」
「うぇ…勉強いやだなぁ…」
君が部室に入るのを見届けると自分も校舎に入った。
「…………。」
その時、後をつけていた人物に気付くことは無かった。