第七話 ポイント制
「えー簡単言うとだねー、まず二年進級に必要なポイント500ポイントになるわけだけどー、学期ごと自由に選択できる教科のテストを合格しても多少は点数で左右されても、基本的には5ポイントしか得られなくてねー。この学院は三年制で月~土曜の間に、一日六つまで授業を入れる事ができるんだけど、一学期と二学期しか無いからフルで授業を入れてこなしたとしても一年を通して360ポイントしか手に入れられなくて進級できないんだ。ちなみに進級できなかった場合は即退学だよ~」
エミリー先生の説明に教室内がざわつく。流石完全実力主義の名門とだけあってそう簡単に生徒たちを卒業させてはくれないらしい。
「まーまー落ち着いてー。確かに授業だけでは進級できないよ~。でもこの学院には一年の間に色々な行事があるんだ。例えばそうだねー、体育大会だとかー学院祭だとかー、寮同士で力を競い合う寮対抗戦だとかー。他にも色々あってねー。それでこの行事っていうのは杖だとか武具だとか物理的な贈呈とかもあったりするけど、何よりポイントが贈呈されるんだー。これはその時の行事の活躍度によって変わるんだけど、これがけっこう大きい」
なるほど……実力主義の名にふさわしい制度だな。
「それも全ての行事でトップ並の好成績を収め続けたら、授業は何一つ受けなくても大丈夫っていう具合にね。ま、そんなのは不可能だから授業をとらないのはおすすめはしないけどね~。まぁ簡単にはこれくらいかなー。ここまでで何か質問ある人いるー?」
エミリー先生が尋ねると、生徒の誰かが手をあげ当てられる。俺も他の質問が終わったら質問してみよう。
「じゃあ君」
「はい。色々な行事があるって事ですけど、一番近い行事だといつ頃になるんですか?」
確かにそこは気になる所である。
「そうだねー。新入生なら四月末にある新人戦が早いねー」
「なるほど……ちなみにその行事でポイントはいくらくらい入るんですか?」
「うん、いい質問。そうだねー。一応後で一覧表渡すけど、新人戦については答えておくねー。とりあえず最優秀成績者は150ポイント進呈だよー」
150……。そんなにも貰えるのか。それだけあれば後は授業だけで賄える。
でもよくよく考えてみればそうだよな、ただでさえ優秀な学院に入学した選りすぐりのメンバー数百人がいる中で頂点に立てばそりゃもうかなりの実力者と言える。
「ちなみに準優秀成績者75ポイント、それ以外にも色々貰える条件はあるけど、成績関係なく参加者全員にはもれなく5ポイントを進呈するからできるだけ参加した方がいいかもねー」
「分かりました。ありがとうございます」
生徒が着席すると、今度はエクレが手を挙げる。
「はいどうぞ〜」
「【ルミエル】にはどうやって入るの?」
ルミエル、王直属の近衛守護部隊の事だ。どうやらエクレも他の生徒同様の最終目標はルミエル入りらしい。
「お、またいい質問だね~。まぁこれについてもポイントが関係してくるんだけど、とりあえず最低条件としてはまず三年間で5000ポイント溜める事、だよ」
エミリー先生の表情は穏やかなほほ笑みから挑戦的な笑みに変わる。
5000という途方もない数字にまた周囲が騒がしくなり始めた。
「おっと、驚くのはまだ早いよ~」
楽し気なエミリー先生に声に生徒が口を閉じ、次の言葉を待つ。
「もし5000ポイントを得ることが出来たとしても今度は学院側での選考が始まる。これについてはまぁもしも5000ポイント溜めることが出来た時に教えるよ~」
まだ何かあるらしい。流石完全実力主義の学院だ。
エクレはとりあえず満足したのか、再度席に着いた。
「じゃあ他にはあるかなー?」
いなさそうだったので、せっかくの機会だからと俺も手をあげさせてもらう。
「そこの黒髪の君ー」
「あー別に大したことじゃ無いんですけど、学院長に会えるとしたらいつ頃になりますかね?」
「学院長……?」
「はい」
いきなりこういう質問をする人はいないのだろう、一瞬エミリー先生も困惑した様子を見せるが、答えてくれる。
「……うーん。まーそうだねー。お忙しいからほとんど学院にはいないから基本会えないんだけどー、新人戦の成績優秀者は院長室に呼ばれるはずだよー」
「なるほど、ありがとうございます」
とりあえず知りたい事は知る事ができたので着席する。
エミリー先生が他に質問はーと言ってる間、何を思うでもなくポケットに手を突っ込むと、硬い金属が指に触れた。
こっそり取り出し見てみると、天竜、猛虎、大亀、神鳥の紋章が刻まれた銀の鉄板が姿を現す。
新人戦というのがどういうのなのかは知らないが、とりあえず勝ちに行くか。