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嘆息嗟歎

目が覚めると、そこにはどこまでも果てしなく続いているであろう草原が広がっていた。

これまでの人生では見たことのない地平線を眺めて、ここには私以外にはいないのではないかと少し不安になってしまう。

「ここ、どこ?」

ポツリと口から溢れてしまった言葉。だけどその声に耳を傾けている者はいなかった。そう悟ってしまうと、途端に全身に恐怖が走る。訳のわからないまま仄暗い街に飛ばされたと思ったら、今度は果てしなく続く草原の中。もう私をお家に帰して!


そもそも、私はどうしてこんな所にいるのだろう。

「そうだ、あの不思議な女の人…!」

そう確か、少年に連れられて行った館の主であろう女性に会ったと思ったら、相手が急に私に口付けをしてくるものだから、私は頭が真っ白になって何が何やらよく分からなくなってしまって、とりあえず突き飛ばしたのだ。そうして気がつくと、私は地平線を眺めていた。


生意気な少年もいないし、少年と言い合っていたメイドさんもいない。ここには何もない。あるといえば澄んだ空気と青く茂った草達。そして地平線と綺麗な空。いくら遠くを見渡しても、山すら見つからない。

「寂しい。」

こんなに綺麗な風景なのに、私の心の中には不安と恐怖しかない。

会いたい。誰でもいい。私を一人にしないで。

そう強く願ったからなのか、ふと自分の背後から「おや、こんな所で人に会うなんて珍しい。」という声が聞こえ、私は直ぐに後ろを振り向いた。

声の主は、キツネの耳と尻尾を持った綺麗な女の人だった。私が勢いよく振り向いたからか、ビックリした顔をしていて、でもその顔も様になっていて、私なんかが声をかけても良いのかと悩むくらいだ。

「キみはどうやッてここに入ッてキたんだい?」

何やら変わった話し方をするキツネさんの質問に私は答えようとするも、「キスされたからです。」なんてこと恥ずかしくて言えず、ズンと私は黙ってしまった。

「おや?自分がどうやッてここにキたのかわからないのかい?」

コクリと頷く私。キツネさんは「キみみたいに迷い込んでしまう人、たまにいるんだよネ。とりあえず私の住処においでよ。お腹空いてない?」と私の手を優しく握った。イキナリ手を握られて私は戸惑うも、キツネさんがグイグイ進んでいくものだから、私に拒否権はないのだろう。と、黙ってついていく事にした。

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