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とある魔族の脱獄

久々の更新です。

謎の魔族視点でおおくりします。

「仕えている人間」がぐっすりと眠り込んでいるのを見届けて、私は地下牢へと急いだ。



 地下牢には、1人の魔族が捕らえられていた。

囚人は魔族と人間の混血らしく、見た目は殆ど人間に近い。異なる点といえば、胸からふくらはぎまで、緑の紋のような模様があるということ。

ただ、人間ではありえない程の魔力量で、この者を捕らえる為に何十名もの屈強な兵士が犠牲になり、死傷者が多くでた。


魔族としては若輩の、それも混血の者1人に。


これがどれだけまずいことなのか、わかるだろうか?

100年前人類は、魔族1人相手であれば、武の心得のあるものが3、4人いればやりこめることができた。

それが今はどうだ?


 魔族の弱点は聖なる力、聖気だといわれている。 

 聖気とは、魔力とはことなり、誰にでもあるというわけではないという。その為、大抵の聖気を持つ者は、自分が聖気を持っていることを知らずにいる。

現在、その力を行使出来る者は大陸中でも500人に満たない。それも、自分の身を護る分しか使えない者が殆ど。


今では、聖なる力をこめた剣、すなわち聖剣でしか上位魔族は倒せないレベルにまで人間ヒトは弱体化した。


聖剣には聖女の全聖気よりも多くの聖気がこめられている。


 聖女というのは聖気を一般人の10倍以上体に宿す巫女のこと。聖女は、聖気を行使できるものの中で、100人に1人しか生まれないらしい。つまり、この大陸全土を探しても、聖女は10人もみつからないということ。

その聖女ですら今現在は上位魔族と戦うには心許ないのだ。


つまり、上位魔族を倒すには聖剣は必要不可欠というわけだ。


 その聖剣はこの世界に3本あるといわれている。


 1本はドゥートリザ王国の国王が、異世界より召喚した勇者、ユーシ=イイジマに授けた聖剣デュランダル。

切れ味でこの剣に勝るものはなく、ダイヤモンドですら真っ二つにする。使いこなすのが難しいが魔王を斬るのに相応しい剣だ。


 1本は聖剣エクスカリバー。

アーサー湖の奥底に眠っていて、その鞘を身につけていると魔法を全て跳ね返す。不思議なことに、誰の手になじむらしい。そのことから、勝利の鈍器とも呼ばれている。


 最後の1本は聖剣アイリアロメリア。

他の2本と違い女にも扱える、比較的殺傷能力の低い聖剣。しかしこめられた聖気は一番多く、手にしているだけで魔力が増幅するとされる。


 そして、その聖剣アイリアロメリアが王都のシャイリア教の教会にあるという噂が流れている。

この半人半魔族は昨晩、それを聞きつけ聖剣を盗もうと教会に忍び込んだのだ。自分の命を脅かす剣を献上すれば魔王が喜ぶと思ったのだろう。


勿論、聖剣などありはしない。

ひとつの国に聖剣がふたふりもあるなんて、あってはならないことなのだそうだから。


噂の出所はわかってはいないが、そんな噂を信じたこの者も愚かだ。

 けどおかげで助かった。混乱に乗じて私は牢から抜け出すことが出来た。はち合わせしてしまったメイドを殺し、そいつに成りすますこともできた。


「ねぇ、アナタ。ここからだしてあげましょうか」


囚人がバッと顔をあげた。


「私は魔王陛下の・・・いえ、セイル様の配下の魔族よ。私もしくじって捕まっていたの。

 ねぇあなた。協力してくれるなら、だしてやってもいいけど、どうかしら?」


 手ぶらで帰れば、セイル様は私をお許しにはならないだろう。魔族は実力主義、私は見放されてしまうかもしれない。

けれど、この半人前の魔族をうまく使って勇者を殺すことができれば話は別だ。もしかすれば、『魔王陛下』の記憶を戻す手がかりもつかめるかもしれない。

 セイル様はきっとお喜びになるだろう。私の失態も見逃していただけるだろうし、出世できるかもしれない。これを逃す手はない。


そんな私のたくらみなどしらない囚人は、私の期待通りの答えをだした。

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