林檎の町マルシア
なにげに新章スタートです。
実に快適だった。
チキンクリム・ピグの背中の上はふかふかで、王宮の柔らかな高級ソファと引けをとらないレベルの座り心地だった。
時々振り落とされそうになったが、マリアベルちゃんが怒鳴ったらペースを緩めてくれたしな!
「元々魔物・魔獣の類は魔族に仕えるモノだからな」
とドヤ顔でいらっしゃいました。
「魔王である私なら殆どの魔物を従えられる」
・・
殆どってことは、一部は無理なんですね、わかります。
魔王でも従属できないのがいるってことですね、わかります。
怖いですね、そんなのと遭遇したら。
まぁ色々あって、アップル地方で一番広い町マルシアにつきました。
「ピーちゃんがいたら町人が怖がるからここで待機しててね」
キャロラインがいつのまにかチキンクリム・ピグの名付け親になってた件。
なんかなついてるしな。動物に好かれるのはいいことだ、多分。
『林檎の名産地マルシアへようこそ』と書かれた、さびれた看板の先を進むと、王都に比べてかなりの田舎町の風景が目にはいった。
林檎の樹林から林檎の匂いがただよっている。
ここで異世界アーシア豆知識。
この世界の林檎は地球とは異なるんだ。
形状や味はほぼ同じだけど、育て方や種類が違う。
この世界の林檎はざっとわけて5種類。
強い香りを放ち果肉が柔らかく、目に優しい緑色をした春林檎。
果汁が多く、鮮やかな深紅をした酸味の強い夏林檎。
甘い香りで蜜がたっぷり、食味が優れていて綺麗な色の秋林檎。
甘味と酸味のバランスが絶妙で、歯ごたえのある冬林檎。
そして秋から冬にかけて生る、赤く色づき、強くて甘い芳香の玉林檎。
最後の玉林檎は魂林檎ともよばれる毒林檎で、実の半分に毒をもち、もう半分は極上の味らしい。その味は他の種の中でも群を抜くとのこと。
白雪姫の継母が食べさせた毒林檎も半分が毒だったよねー。
このアップル地方は、大陸で唯一この5種全てが揃う場所なのだ(リオン談)
ちなみに俺は冬林檎派である。
さっぱりしててシャクシャクいって美味しいんだな、これが。
コネリも冬林檎派で、キャロラインは春林檎派。
リオンは秋林檎派で、マリアベルちゃんは夏林檎と玉林檎が好きらしい。
マリアベルちゃんの体には、よっぽど強い毒でなければ効かないので、玉林檎の毒部分も平気で食べられるとのこと・・・何それ羨ましい。
なんでも、幼い頃から微量の毒を飲んで慣らしてきたから耐性があるんだとか。なんか、元の世界の忍者みたいだな。忍者もやるんでしょ?毒とか薬とかをあえて飲むことで抗体をつくる、みたいなの。
そこまでして玉林檎を食べたいとは思わないけども。冬林檎で十分だわ。
「歯ざわりがよく濃厚で果汁も多く中々の味をしている」
とのことです。
辺りをみまわせば、林檎、林檎、林檎。とにかく林檎の樹だらけだ。
アップル地方は、林檎好きにはたまらない場所のようだ。
・・・そういや、この世界の名前を言うのってこれが初めてだったりするっけ?
ここ、異世界アーシアのドゥーテリザ王国って言うんだぜ。特に覚えなくてもいいと思うけどな。
2015.5.9
関連作品との矛盾が生じた為、王国の名前を変更しました。