第四話 彼は彼女に近づいていく?
煙草の箱を取り出しつつ、腕時計を確認する。 わりと使い込んだデジタル時計の液晶画面には
「sat/12/March/9:50」と表示されていた
・・・約束の時間まであと10分ある。
結局、あの後、司の笑顔が頭から離れなかったし。ボーッとしていたせいか、普段は起こさないであろうミスも起こしてしまった。
そうだ。今日の朝も、トーストをオーブンに入れた後、なぜか司の笑顔が思い出され、自分自身で混乱していると、いつのまにかかなり時間が経っていて、おそるおそるオーブンを開けてみると・・・
黒い何かが煙を発生させていた次第である。
そうやって考えてるうちに、前方から必死にこちらに向かって前進する司が見えた。
しかし、都心に、程良く近いここの駅前では、親子連れ、カップル、など様々な人が大勢歩いていて、司は人の流れに流されそうになっている。 「おいおい、大丈夫かよ・・・」
一人で呟きつつ、俺は人混みであたふたする司のところまで歩いて行く。
結局、俺が結構近づいてもまだ わたわたしていた。
「ほら、行くぞ。」
とりあえず司の手首を掴んで、歩いていく。
途中で
「わっ」とか
「待ってよ」とか聞こえてきたが無視して進む。
人の流れが少なくなっているところまで行き、手を離しようやく司をまともに見る。
「おはよ〜」
司から挨拶してくる。 俺は
「おう」だとかなんとか言った後、司の服装を見た。
全体的にセンスが良い。なおかつ司の雰囲気にあってふわふわした感じだ。
ここで気づく。じゃっかんサイズがどれもデカい気がする。
女の子になってからの司の身長は150ちょうどってところだ。
だが この服は女の人の服の中でも、結構大きいサイズなんじゃないか?
そんなことを思いつつ、またもやぼーっとしてしまうと、不思議に思ったのか司は俺の顔、を下からのぞき込むような感じで見た。
「どうしたの?ボーッとして」
「あ、あぁ。なんかお前の服装センスとかは良いと思うんだが・・・サイズがデカいと思ってな」
「ん〜?これね?だって姉貴のだし」
司は少しためた後続けた
「それで俺のための服を買いに来たんじゃん」
これどうなるよ?