第一話 そして伝説へ
「えー信じられないと思うけど
「羽山 司」です・・・よろしくお願いします」 一応、テンプレートかつ無難な自己紹介を済ませたつもりだったが やはりこの容姿にこの体型スペックとなるとクラスのみんなの好感度&ハート&興味をガッチリ鷲掴みするには十分すぎるくらい十分なようであって、ここ、普通の私立高校二年B組の教室はコンマ一秒静まりかえったあと、元・冴えない普通の男子、現・美少女に対しての質問の暴風域に突入した。
「ほんとに羽山君!?信じられないくらいに美少女になっちゃったね!」 「女の子の生活のことでわからないことがあったらいくらでも聞いて!」 と言っているのは女子 「司!!俺たちの友情は変わらないぜ!」 「更衣室とかは今までと一緒だよな!」 と下心満載で司+女子を大いにヒかせたのは男子 司はこの状況をうまくまとめられる訳でもなくとりあえずニコッと笑っておいた。
とりあえずその場は授業開始のチャイムと共に終結したのだった。
ちなみに司の先程の笑顔により恋に落ちた男子が五名ほどいたのは余談。 「しっかし本当におまえ、女になっちまったんだなあ」
真新しいフェンスに寄りかかって煙草に火をつけながら田中は独り言のように言った。
茶髪だが意外にもサラサラしている髪が学校の屋上を吹く風になびいている
「うん、大きな大学病院で精密検査してもらったんだけどDNAからなにからすべて完璧に女性のものだったよ」
司は普段より大きく感じるベンチに座って、スカートをの裾を少し気にしながら田中の言葉に答えた。田中と司は中学からの同級生で学校の中で司がもっとも一緒にいることの多い友達である。
「朝、起きたら女になっていた・・・か、とてもじゃないけど信じられないよな」
目つきは鋭いが、整った顔立ちを弛ませて田中は微笑した。煙草からは白く細長い線が出ていて校庭とは反対側のほうへ流れている。
「うん、俺も最初は信じられなかったよ。鏡見たら別人がこっち見てるんだもん」
司はこれまでの自分に対する一人称と同じように
「俺」を使っているが、女の子となってしまった今、やはり俺では違和感たっぷりである。いやそれも一つの新ジャンル・・・とかゆうややこしい話は置いておこう
「司さぁ、やっぱり自分のことを俺って言うのは・・・」
そこまで田中が言いかけたとき屋上の扉が勢いの良い音を立てて開いた。