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馬車の山
馬車の山
その山はとても険しい、決して普通の人は歩いては越えない山だ。
誰もが馬車を利用し、車窓から見える風景に、馬車を引く跳ね馬の姿に感嘆する。
山道はとても険しく人が歩けば、必ずと言っていいほどに足を滑らせそうな、そんな道が続く。
木々は生い茂り、川は流れが速く、滝は見事なほどに天に向かって流れる。
山を歩いて越えるのは、蛮勇を抱えた猛者か常識をしらぬ馬鹿者か。
馬車の中では仮面をつけた御者が窓を流れる時の欠片をすくい上げ、その欠片を皆に振舞っている。
その欠片が見せる万物もかなわぬ輝きは、何者にも代え難い。
指に怪我をしても、欠片の輝きには勝てない。
この山は、そういう山だ。
馬車の山
その山はとても険しい、決して普通の人は歩いては越えない山だ。
馬車から一人の旅人を見た、汗と血を流す姿を。その姿も、かけらの輝きに消えた。
この山は、そういう山だ。