第4話 再会と別れ
急いで二人は裏口へと向かった。
角を曲がれば裏口というところで、滝ノ下さんは立ち止まり銃を構える。
「すげー!!それ本物ですよね?」
「そんなことどうでもいい!・・・覚悟しろよ。」
止まっていた足が震えながら一歩ずつ角へと向かう。
「か・・・か・・覚悟は、で・・できたか?」
「滝ノ下さん・・・・こそ・・で・・できているんですか?」
「あぁ・・・で・・できているとも・・・」
明らかにできていなかった。額には汗が湧き水のようにあふれ、地面へと滴り落ちている。それを見ていた拓也も感染したかのように汗が出始めた。
滝ノ下さんは服の袖で額を拭った。袖には汗がべったりと付着していた。
「いくぞ・・・拓也!!」
「OK・・・!」
滝ノ下さんは深呼吸すると、すばやく角を曲がり、そこにいると思われる何者かに、銃口を向けた。
俺も後ろに続いてすばやく角を曲がる。
二人の目にはガラスが割れた扉の前でうずくまった男の人が映った。
「・・・・・滝・・・上か?」
滝ノ下さんはつぶやいた。
えっ・・・・滝上ってさっき滝ノ下さんが叫んでいた人・・・?
よく見ると、警察官の制服を着ていた。
どうやったらそうなるのか?というほどにボロボロで、いたるところに血のようなものや泥などが付着しており、よく見ないとわからないが、腕についたワッペンを見て確信した。
ということは・・・やっぱり・・・?
滝ノ下さんは銃をホルスターにしまい、滝上さん?の様態を調べる。
「滝ノ下さん・・・どうですか?」
「・・・・・多分大丈夫だ。脈があるし、呼吸もしている。」
「よかった〜。」
俺はそっと胸をなでおろした。
「よし、滝上を二階へ運ぼう。」
滝ノ下さんは体重が60、70kgありそうな滝上さんを普通におぶった。
「あっ!!!」
俺は滝上さんの顔を見て驚いた。さっき助けてくれたおまわりさんだったからだ。
「どうした?」
「このおまわりさん・・・さっき俺を助けてくれた人です!」
「そうなのか!?・・・後でお礼言えよ!」
「はい!・・・それより、重くないんですか?」
「俺は警察官だぞ。こんくらいの体力があって当たり前だろ。」
確かにそうだ。
二人が二階へと行こうと歩き出した。その時!!
「ガッシャーン!!!!!」
明らかに後ろから音がしたので、二人はすばやく後ろを見る。
「ウゥ〜〜〜〜、ウゥ〜〜〜〜」
そこには化け物が窓のガラスが割れたところから浸入しようとしていた。
「マズイ!・・・拓也・・ついて来い。」
「はい!」
二人は急いでもとの場所へと戻った。
「どうするんですか!?早くしないと!!!!!!!」
「・・・・・手伝え!!!」
滝ノ下さんは裏口へと通ずる廊下の扉を閉め、すぐ隣にあるロッカー動かし始めた。
俺も思いっきり力を込め押す。
「後もうちょっとで・・・・」
「・・・よし、これで入ってはこられないだろう。」
塞いだ扉の向こうからは、化け物が扉を叩きながら呻いている声が聞こえる。
数十秒もすると声がしなくなった。
二人はほっとため息をつく。
「た・・た・・・滝ノ下・・・」
滝上さんが意識を取り戻した。
「滝上・・・!!大丈夫か!?!?」
「大丈夫なわけ無いだろう・・・」
滝上さんは薄っすらと笑った。
「滝上・・・さん・・・さっきはありがとうございました!」
「おう・・・・さっきの・・・無事でよかった・・・。」
「それよりな・・・滝ノ下・・・」
「一生の頼みを聞いてくれねぇか・・・?」
「何だよ・・・お前の口からそんな言葉が出ると思わなかったよ。」
「それで・・・頼みって。」
「・・・・・・・・・・」
滝上さんが何も言わなくなって、滝ノ下さんは滝上さんの顔を覗き込む。
滝上さんの目から涙が流れていた・・・。
「どうしたんだよ、滝上〜!いつものお前らしくねぇぞ。」
滝上さんの腕に手を置くと、液体のようなものが手についたのを感じた。
滝ノ下さんはそっと手をのけると、出血していた。
「どうしたんだよ、これ?」
よく見ると歯形をした傷口だった。
「お・・・お前・・・まさか・・・!?!?!?」
滝上さんはホルスターから重い拳銃を取り出す。
「これで・・・頭を・・・」
聞かなくてもわかった。何が言いたいのか。
俺は涙を流しながら耳を強く抑えた。
聞きたくない・・・聞きたくない・・・聞きたくない!!!!!!!
数分後、銃口から弾が飛び出し、滝上さんの頭を貫いた。
「アァ!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
午前零時を知らせるアラームとともに、滝上さんの命はこの世を去った。
12月31日午前零時現在
感染地域 47都道府県中34都道府県
感染者 約8000万人 (推定)
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