第30話 多田の裏切り
相変わらず文章能力低くてすいません。これから、できるだけ手直しして行こうと思います。
俺たちが急いでプラットホームへ出ると、下には倒れている倉澤が目に入った。だが隣に宮崎さんの姿は無く、血の人型できていた。
つまり・・・・宮崎さんは生きているのだ!!
・・・・でもどこへ行ってしまったのか!?
「拓也、なに止まっているんだ!!時間がないんだぞ。」
そうだ。今はなんとしてでもあいつを倒して、ここから脱出しなければならない。再び脚を動かした。
壁に沿ってある廊下を行くと扉が目の前に迫った。
「どうしますか、古賀さん!?」
「行くしかないだろ!」
俺はドアノブを握り、古賀さんと国東さんは銃を構え、扉に向けた。
・・・古賀さんが首を縦に振る。
俺はノブを回し、扉を勢いよく引いた。
先行して中へ2人が入っていく。続いて俺と吾郎君も中へ入った。
そこは普通の事務所のような感じだった。事務机が向いあった状態で並び、入ってすぐ隣にはネームプレートが書かれた縦長のロッカーが並んでいた。清潔で何も変わったようすわない。奥には階段が見える。きっと下に下りるものだろう。俺は銃を構えたまま階段に向っていると、突然、部屋を詮索していた古賀さんに呼び止められた。
「拓也、ちょっとこっちこい。」
言われたとおり古賀さんの下へ駆けつけた。
「これ見てみろ。」
古賀さんの指したのはロッカー。何も変わった様子はない。
「ネームプレートだよ!」
見ると『多田弘志研究所長』その下には、なんと小さく『多田弘志3等陸佐』と書かれていた。
あいつが裏切者だと言う事はさっき分かったが、ここのボスだとは知らなかった。裏切りに裏切りが重なり、俺の怒りはほぼ頂点に達していた。ここまで怒りに満ちた自分は初めてだ。
「絶対、殺す」
ありったけの怒りをロッカーにぶつけた。
「ま、待て・・・これは、もしかして・・・冗談だよな・・・」
古賀さんが、今度は隣のロッカーを見ながら不気味に笑っている。見るとそこには『多田研究所長補佐』と書かれ、その下には
『多田祥平巡査』
「よく見つけたなぁ」
聞きなれた声に振り返ると、兄貴に銃を突きつけ、不気味に微笑む祥平さんがいた。
「お前たちのせいでどんだけ計画が狂ったことか。まあでも、無事にデータ集積や製品も完成したし、成功したと言えば成功したんだろうけど、俺今・・・無償にイライラしてんだよね。こんな感じにストレス発散したいの」
祥平さんは銃を下に向け、発砲した。
「あぁあああああああ!!!!」
悲鳴を上げて兄貴はその場で崩れた。脚を押さえる手の隙間から血が出てくる。
すぐにでも駆け寄ってやりたかったが、祥平さんに銃を突きつけられて止められた。
「これでもまだ殺し足りないんだ。どうしよう拓也君。ぼく・・・どうしたらいいのかな・・・ふふふっ」
俺は息を呑んだ。
「死ねば・・・いいだろ。」
「はっ?」
「自殺すればストレスなんて感じないだろ」
すると祥平は俯き、腕が震え始めた。俺の言葉が効いたのか?
「オマエガイチバンムカツクンダヨ!!!!」
『パァーン』
銃声と共に奴は後ろに倒れた。
頭には穴があきそこから血が噴出している。振り返るとそこには血だらけの宮崎さんがいた。
「大丈夫か・・・拓也・・・?」
そう告げて倒れこんだ宮崎さんに駆け寄った。
「宮崎さん!!」
「俺はもう駄目だ・・・お前たちだけで逃げろ。」
「嫌ですよ、そんなの・・・」
俺は大きく首を振った。
「無様な姿だ・・・」
俺は背筋が一瞬にして凍りついた。
死んだはずの多田祥平が俺の後ろに立っているからだ。
「自衛官が警察官にやられるとはなぁ・・・撃ちごたえ全く無かったんだけど?・・・ふふふっ」
宮崎を見下し、甲高い声で笑う多田祥平に古賀さんがキレた。
兄貴が銃を突きつけられ人質になっているのをお構いなしに、殺気漂う目は祥平から1mmともずれなかった。
「古賀さん、やめてください!!」
俺の言葉も虚しく、古賀さんは祥平の胸倉をつかみ、壁に押し付けた。
「オマエが宮崎を撃ったのか!?」
「そうだけど、何か?」
睨みつける古賀さんと微笑む祥平はくっついているかのごとく顔を近づけていた。と同時に古賀さんはホルスターから拳銃を抜き取っている。
「お前なんか生きている価値などない!!」
「ふふふっ。だから・・・何・・・」
「お前を殺す。」
さっきまで笑っていた祥平は一瞬で過ぎ去ると共に、顔が青ざめ体は硬直していた。
次の瞬間、軽く乾いた音共に銃弾が祥平の頭を貫通し、どす黒い血液や脳と思われる物体が壁一面に飛び散った。
祥平の体は壁を滑りながら床に倒れた。
これでひとまずは危機を乗り越えた。誰もが緊張から解放され、肩を落としている時だった。甲高い不気味な笑い声が再び部屋に響き渡った。まさかと思い祥平の方を振り返ると、頭から血を流しながら、口を吊り上げて微笑んでいる祥平が立っていた。あれほど被弾したのにもかかわらず未だに生きている。それも、気がつけば古賀さんが捕らえられていた。
・・・もう終わりだ。俺は床に座り込んだ。
「俺を誰だと思っている。この研究所の所長補佐だぞ!!STを体に打っていないわけないだろ・・・ふふふっ!!」
祥平はゆっくりと古賀さんの頭に銃を突きつけた。
「もうじき父さんが商品をここへ連れてくる。お前たちにはそれまで生きていてもらわなければならない。ここまで生き残ってきたお前たちとの戦闘データが欲しいからなぁ・・・。想像しただけでも興奮するぜ。と言うわけで古賀!!開放してやる。」
古賀さんは突き飛ばされ、ロッカーに激突し、床に倒れた。
「今回の商品は今までのゴミとは格が違うからな、覚悟して・・・」
突然、激しい金属音と共に目の前を火花が散った。その音は耳を塞いでも体が痺れる。暗闇の中、しばらく蹲っていると音はおさまった。
しばらくした後、俺は状況確認をすべく、恐る恐る目を開けた。
するとそこには頭のない、警察官の死体があった。恐らく祥平だ。切れた首からはどす黒い血が噴出している。
どうしてこんな事になったのか?
壁を見れば分かった。大きな亀裂が3本。その亀裂から見える1階には、ニヤリと不気味に笑みを浮かべた多田さんと・・・長い爪を持った化け物が一匹いた。
一瞬目が合った瞬間怒りが湧き起こった。体に穴を開けられ、何度も吐血し、意識が朦朧としている中、必死に生き延びようとしている宮崎さん。彼をこんな風にさせたのは紛れもなくあのクソオヤジだ。
「来いよ・・・ふふふっ」
気がつけば、俺は1階に下りようと階段に踏み出していた。
「拓也!!」
死にかけた体から発せられた最大限の声が俺の足を止めた。振り向くと口から血を垂らしながらかろうじて立っている宮崎さんがいた。
「俺の分も奴に食らわせてやってくれ!!頼む・・・」
目からは小さな涙をこぼしていた。それは彼だけの涙ではない。あんなバカのために命を落としてきた同僚、仲間、すべての人間の涙だ。
「お前ら俺たちがいるのを忘れていないか?」
「俺たちもまだ戦える。」
そう言って立ち上がったのは、古賀さんと兄貴だった。
「拓也・・・行こう。」
俺は無言で頷いた。
階段を下りる時、俺は宮崎さんを見えなくなるまで見ていた。
1階は2階とさほど変わらない、事務所のようなところだった。階段下りてすぐの扉を開けると広いプラットホームの1階に出た。右奥には避難用の列車。中央には高さ3mはあると思われる怪物。その顔は多田さんだった。
「どうだ?拓也。この俺の姿。すごいと思わないか?」
「そんな事のために、皆を犠牲にされたのかと思うと・・・」
俺はホルスターから銃とナイフを抜き取った。
「死ねぇえええええええええええええ!!!!!」
もう無我夢中で飛び込んでいた。だが突然、そいつは姿を消した。本当に一瞬で消えた。
右を見ても左を見てもいない。じゃあ・・・
俺が素早く後ろを向いた時には遅かった。巨大な爪が俺めがけ飛んできた。咄嗟に目を瞑った。もう終わった。ここで刺されて俺は死ぬんだ。そう確信していたが、一向に痛みを感じない。
「本当にバカだな・・・お前」
俺は石になった。目を開けるとそこには宙に浮いた兄貴がいたのだ。背中からは3本の鋭いとげが生えている。そこから夥しい量の血が溢れ、地面に溜まっている。俺はもう声が出なかった。
「弟のために自分の命を捨てるなんてアホらしい・・・」
「・・・勝手に・・・言っていればいい・・・お前は・・・死ぬんだからな・・・」
そう言って兄貴はポケットから短剣を出した。それを見て多田は顔が青ざめていくのが分かった。
「やめろ!!」
「死ねぇええええええええええええええええ!!!!!」
鋭く尖った短剣はきれいに奴の心臓めがけ刺さった。
その瞬間、水道の蛇口をめいいっぱい捻った時の様に血が噴出し、俺たちは一瞬にして赤く染まった。
多田はもがき苦しみ、何度もこう叫んでいた。
「死にたくない!!!死にたくない!!・・・・」
その姿を見て俺は可哀想に思う気持ちは1ミリとも無く、むしろ今まで殺されてきた仲間の事を思うと怒りで満たされていった。彼らもきっとゾンビ、化け物にやられ、死ぬ間際に思ったであろう・・・・死にたくないと。
「オマエの馬鹿な計画によって殺された人たちの痛みを思い知れ!」
奴は数分間、のたうちまわった後、地面に落ちた。気がつけば俺はプラットホーム中央に出来た大きな塊の前に立っていた。その塊に刺さっている短剣を抜き取ると俺は無我夢中でそのやわらかな塊めがけ、ぶっ刺した。何度も、何度も、爪が掌に食い込むくらい剣を握り、勢いよくぶっ刺した。
「おい!やめろ・・・拓也・・・」
確かにそう耳に届いた。でももう止められなかった。まるで死んでいった人が俺を乗っているみたいに、塊を切り刻んでいた。
「やめるんだ!!」
ついに俺は上下する腕をつかまれた。だが未だに止まらない腕。
「拓也・・・・」
ぼやけた視界の中に、何か頬を冷たいものが伝っていくのが分かった。
「拓也!!」
軽い音が広いプラットホームを駆け抜けたのと同時に俺は我に帰った。
「拓也!!」
目の前にいた古賀さんは俺めがけ抱きついていた。
俺は一気に体が重くなっていくのが分かった。
床にはビクともしない血だらけになった兄貴の姿があった。
すぐに古賀さんの下を離れ、兄貴の前に崩れた。
「兄貴ぃ・・・起きてくれよ、兄貴ぃ・・・なぁ・・・頼むからさ・・・」
掌から冷たい体温が伝わる。揺れる体はまさに人形のようだった。
「兄貴ぃ・・・・」
すると突然、サイレンがなり始めた。
『研究所爆破、ミサイル発射、1分前。所員は直ちに避難せよ・・・』
「ヤバイ、拓也。立て!!」
「俺は行きません。兄貴とここに残ります。」
「何を言っているんだ!!さ、早く逃げるぞ!!」
その時、事務室から吾郎君と、国東さんに肩を借りながら宮崎さんが出てきた。
「古賀さん!!何しているんですか!?早くしないと死にますよ!!!」
「分かっているけど・・・拓也が・・・・」
俺にはもう兄貴しか写っていなかった。
『爆破30秒前』
「いい加減にしろ、拓也!!このままだと皆ここで死んでしまうんだぞ!!」
「なら俺は置いて行ってください・・・これ、鍵です。」
俺はポケットから鍵を取り出し、古賀さんに渡すと再び兄貴を前に座った。
「兄貴・・・俺も今そっちに行くから待ってろよ・・・」
「拓也ぁああああああああああああああああああああ」
『爆破10秒前』
古賀さんはパニクり、とにかく口々に叫び始めた。
『9、8、7、6、5・・・』
国東さんと吾郎君は2人泣き叫んでいる。
俺は目を瞑った。
『3』
『2』
『1』
12月31日 午後11時59分59秒
ミサイル発射、実験棟爆破まで・・・・・あと1秒
生き残り 三井田拓也、古賀巡査、国東晴香、国東吾郎
あと4人
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