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第27話 プラットホーム

情景描写がへたくそですいません。

黒い金属物をもった腕が風を切る音がした。心が引き締まったことを表すかのように2人の黒い革靴が泣いた。その泣き声は「ギュゥ」というような革靴特有の音だ。その靴が左右交互に泣きながら動き始めた。


「ちょっと待て!!」


2人が振り返るのを確認すると高杉さんは指差した。その先には食堂に通じる大きな穴がある。中にはSAT隊員の無残な死体が残っているあの食堂だ。何が言いたいのだろうか?俺を含めた3人は疑問に思った。


「その銃よりあいつ等が握り締めている自動小銃の方が威力あるだろ?」


納得した。古賀さんと宮崎さんは素早く大きな穴に入って行く。


「高杉さんよく思いつきましたね。俺にはまったく・・・」

「俺の頭にはあいつらの姿が焼きついているからな。最後の最後まで共に戦った姿が・・・。あいつらと一緒にもっと生きたかった。」


高杉さんは昔を懐かしむように天井を見上げていった。


「なんか悲しい思いさせてしまって・・・すいません。」


俺はまさか銃の話がしみじみした話になるとは思ってもいなかった。


「謝らなくて良いよ。それより・・・拓也・・・君。肩を貸してくれないかな?」

「良いですよ。」


高杉さんの前で背中を向けしゃがんだ。寝そべった高杉さんは、俺の右肩を左手でつかみ、負傷している右足に体重をかけないように起き上がった。


「すまんな・・・」


「立ち上がりますよ?」

「あぁ・・・」


ゆっくりと、高杉さんがバランスを壊さない程度のスピードで立ち上がった。多少は今までの疲労で肩に痛みが走ったが我慢できる程度だった。


「ありがとな。」


丁度同じ頃、自動小銃を5丁も持ってきた自衛官と警察官が帰ってきた。こうしてみるとこの日頃滅多に見ることの出来ないコンビは独特の雰囲気を醸し出していた。


「拓也!!」


古賀さんは自動小銃1丁を何の予告も無く、ただ名を読んだだけでそれを俺に向け、放り投げた。慌てて両手を出すと見事腕に乗った。


冷たく重い。重力による重さよりも容易に人を殺せる武器であるという心にかかる重圧の方が重い。初めて手にしたときほどではないが鳥肌が立った。

試しにトリガーに人差し指をかけ顔の前に銃を構えた。


「おぉ〜なかなかさまになっているぞ。この短時間で随分と上達したな。」

「本当ですかぁ?」


古賀さんの言葉に素直に照れた。初めの時とは打って変わってかっこよさを味わっていた。このままだと俺は銃好きになってしまうかも知れない。そんな自分が少し恐ろしかった。


「もう良いだろ。宮崎、行くぞ!」

「了解。」


宮崎さんが親指を立てると2人は部屋の中へ入っていった。


「高杉さん、俺たちも行きますよ。」

「了解。」


右手は高杉さんの腰へ、左手には自動小銃を握って、音を立てないよう注意しながら一歩を踏み出した。


部屋の中は異様な雰囲気が漂っていた。部屋全体が赤い光に包まれ識別能力がおかしくなりそうだった。左には何かの機器が縦10mくらいに亘ってある。それに沿って奥に行くと1枚の扉があった。


先頭の2人は素早く扉の両側に立った。まるで今から扉から誰かが登場するみたいに。


古賀さんが頷くと宮崎さんも頷いた。どうやら行く準備は出来たかという合図みたいだ。次に俺に向けられたのでちゃんと頷いて見せた。


古賀さんがゆっくりレバーを手で握る。まるで今俺が古賀さんであるかのように手に大量の汗をかいていた。銃を滑って落としそうだ。銃を握りなおした。


次の瞬間、古賀さんはレバーを素早く下に下げ扉を開けた。急に広がった光が俺の視界をすべて奪った。咄嗟に目を瞑った俺の耳に鉄の上を移動する足音が響いた。

その音を頼りに目を細めながらゆっくりと前へ進む。手を縦横無尽に動かし、周りの安全を確かめながら額を流れ落ちた汗を拭った。


まだ扉の向こうには着いてないのだろうか?


そう思った途端、足音が急激に変わった。よく建築現場にある作業員の足場を人が歩くようなそんな音が今俺の足元でしている。・・・さっき聞いた音だ。


ここは一体何処なのだろうか。


次第に明るみになれた目をゆっくりと開けると、急に肩を押さえつけられた。


「何をする・・・」

「静かに・・・!!」


右隣に口元で人差し指を立てる古賀さんが居た。左側、ちょっと離れた場所に宮崎さんしゃがんで柵の縁から顔を覘かせている。


俺たちが今しゃがんでいる場所は、まさに建築現場の足場のような狭い、鉄製の通路だった。だが実物よりは安全で、ちゃんと俺の目線よりも少し高いコンクリートの柵がある。その縁を目で追っていくと、どうやらこのホールの壁に沿ってあるらしい事が分かった。それにしても天井が高い。


俺はその手すりから宮崎さんと同じように縁に目線を合わすように出した。


列車がある。ここは・・・プラットホームだ。

俺はポケットから父さんにもらった鍵を取り出し、視界に2つを並べた。

列車は新幹線のような先が鋭い形をしていて、2両編成だ。

その手前には本物の駅さながらのホーム。電光掲示板もあったことに驚いた。一体何のために作られたのか。

ホームのすぐそば、俺から見て左手には窓口改札がある。もしかしたら中に駅員がいるのかもしれないと、期待を胸に探したが誰もいなかった。改札だけではない。プラットホームの何処にも人は存在しなかった。

それなのにこの2人は何に警戒しているのだろうか。


だがすぐにその疑問は改善された。


誰もいないと思っていた改札から、武装した人が3人。自動小銃を手に、鋭く周りを見渡しながら出てきた。向こうも俺たちの存在に気づいたのか。


左を見るとその3人に照準を合わす宮崎さんがいた。


「宮崎さん!!何をするんですか!?!?あれは人間ですよ!!」


声を潜めながらも厳しい口調で言った。


「なぜ人間だと分かるんだ?もしかしたらあいつらの仲間かもしれないだろ?」


トリガーに指をかけた。


「やめろ!!」


だがもう遅かった。乾いた音が3人の命を奪った。すべて彼らの頭部を貫通。噴出した血と頭の内容物と共に床に倒れた。


「宮崎さん!!あんた正気か!?!?」


何の罪のない人を、何の戸惑いも無く殺したことに爆発した俺は、胸倉をつかんで、つい大声で怒鳴ってしまった。


だがどうも様子がおかしい。薬莢が床に一つも残っていなかった。


「俺じゃない!!」

「じゃあ誰が!?!?」


その答えを示すかのように、目の前の若者が血を噴出した。

軽く乾いた音がこの大きなプラットホーム内を響き渡った。1人の叫びと共に。銃弾が彼の体を貫き、生暖かい色の付いた液体が目の前を飛びかえった。まさに一瞬だった。口から血を吐き出すと彼はそのまま横に倒れ、勢いで柵を乗り越えてしまった。


その体は空中で回転した後、勢いよく1階の床へ叩きつけられた。


「宮崎さん!!!」


俺が叫んだ時には宮崎さんは1階の床に血を噴出しながら仰向けに倒れていた。夥しい量の血を吐き出し、腹を押さえ苦しんでいる。


一体誰が!?!?


「確かあんたは・・・宮崎って言ったけか?」


聞いたことある声だ。この声は倉澤さん!!裏切者は裏切られても裏切者のままだった。丁度俺たちの下から出てきた。出入口があるようだ。奴はまだ俺と古賀さんの存在に気づいていない。・・・待てよ、倉澤さんがいた位置からじゃあ俺たちに銃弾を浴びさせるのは不可能だ。


一体誰が!?!?


俺と古賀さんは急いで体を沈め、周りに目を見張った。


「ふふふっ。自衛隊って言っても案外弱いな。」


倉澤の声だ。


「せっかく意識を取り戻したのにねぇ・・・ここで君とはサラバだ。ふふふっ」


『殺される・・・』


直感的にそう思った俺は咄嗟に目と耳を塞いだ。


12月31日 午後11時51分 

        ミサイル発射、実験棟爆破まであと9分

生き残り 宮崎三等陸士、古賀巡査、高杉巡査長、三井田拓也、(倉澤巡査)


(山口士長、多田三等陸佐、多田巡査、国東晴香、国東吾郎)                  

    あと10人(裏切者1人、生死不明5人)


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