第10話 残酷
どこに行くかもわからず、渡り廊下を渡っていくと体育館が見えた。
大きさは公立学校の体育館の1.5倍くらいの大きさだった。
そして、体育館の入口へと着いた。一人が木製のずっしりとした引き戸を、顔が赤くなるくらいまで力をこめて開けた。
どうやら、普通に重くて開けにくい上に、扉のレールが錆び付いているようだ。
ようやく開くと、中にはざっと見て50人くらいの警察官が敬礼しながら真ん中を向いている。
その真ん中にあるステージには目隠しをされた多田さん、国東さん一家、そして例の裏切り者、滝ノ下、そしてもう一人、如何にも階級が高そうな60歳位の警察官が一人立っていた。なにかの儀式のようだった。
「笹見教官!例の餌を捕獲しました。」
高橋がそう言うと、笹見は目で合図した。
三人は結局手錠されたまま目隠しして、ステージに上げられた。
「笹見教官!ついでに反乱組の一人を抹殺したので連れてきました。」
「ご苦労。お前たちにはそれなりの位を与えよう。皆も見習え。」
そう言うと、警察官達は威勢良く返事をした。
「さて、早速始めるとするか。お前たちは黒部に感謝しろよ。」
拓也たちはいったい何を始めようとしているのかわからない。
見えない恐怖が六人を襲う。
数秒すると何かを食べている音が聞こえてきた。クチャクチャと気味の悪い音を立てながら食べている。
あまりの恐怖に自分たちの下には汗が溜まっていた。どうでもいいから速くこの状況を抜け出したい。そう思うばかりだった。
しばらくその音は体育館に響き、20分くらいだろうか?音は止まった。
「もう今日は終わりだ、そいつらは倉庫にしまっとけ。見張りを忘れるなよ。」
笹見教官がそう言うと、また威勢の良い声をあげていた。
「それと、ゾンビになる前にこいつを捨ててこい!」
すると拓也たちに、近づいてくる足音が聞こえ始めた。その足音はだんだん近くなり、目の前に来たぐらいのところで止り、目隠しを取り上げた。
初め、目がくらんで目の前のものが見えなかったが、次第に慣れてくると地面が赤黒く染まっているのが見えた。明らかに血だ!鉄の臭いが鼻にくる。
そして顔を前に移動させると、そこには、さっき襟元をつかまれて連れてこられた警察官の死体があった。赤く染まった名札には黒部と刻まれていた。
先ほどとは比べものになれないくらい変わっている。
顔は何もなっていないが、腹は開かれていて、内臓が飛び出ていた。拓也は我慢できずに吐いてしまった。
「・・・お前も食うか?ハッ、ハッ、ハッ・・・!!!」
笹見教官は大声で笑った。口からは血が垂れている。
「早く連れて行け!」
そういわれると10人くらいの警察官に腕をつかまれ連れて行かれた。
黒部と言う名の警察官は足と手を二人に持ち上げられ、体がブランブランなりながら校舎の方へと連れて行かれていった。
さっき入ってきた扉とは逆の方向にある扉を開け、外へ連れて行かれた。
渡り廊下の向こうには武道場がある。そこに収容されるのかと思いきや、道をはずれ、武道場の横にあるコンクリートの建物の方へと行き出した。
一階建てで、教室二室分くらいの大きさだ。上には倉庫と書かれた札があった。
「さあ、入れ!」
扉を開けると、みんな中へと押し込まれ、扉を閉め鍵までかけた。
「くそ!もうちょっとやさしく扱えよ!!!」
「それにしても、あの笹見ってやつ何者だ!?!?」
松尾が声をひっくり返して言った。
「人間じゃないな。あの様子からして、あの笹見って奴、あの警官を食っていたな。」
すると突然後ろから物音がした。
「誰かいるのか!?!?」
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