第9話 探索
山口さんと松尾、拓也は警察学校の周囲に張ってある塀に沿って歩いた。
左には三階建ての校舎が三棟並んでいる。
「よし!まず手前の第一校舎から行きましょうか。」
二人は山口さんに続いて校舎内へと入っていった。
中はとても暗かった。月明かりで大体は見えるが危険だ。
入って100mくらいの長さの廊下が続いていて、すぐ右には階段があった。
「さすがに手分けして捜索するのはあぶないよなぁ。」
「先に一階から捜索しましょうか。」
拓也と松尾は頷き、山口さんの後についていく。
山口さんの銃に備えられたライトの光線を頼りに、一歩一歩慎重に進んでいく。
教場は一階に十室あり、その中間には渡り廊下があった。
一つずつ目を凝らして調べるが何も無い。
結局そのまま二階へと上がった。そしてちょうど階段の踊り場にさしかかったとき、
二階から足音が聞こえてきた。
三人は急いで階段を駆け上がった。すると廊下には警察官らしき人物が教場三室分くらい先に、拓也たちに背中を向けながら奥へと歩いていた。山口さんが声をかけてみる。
「あの〜、大丈夫ですか?」
するとその人は足を止め、なぜか無線を使い始めた。
「こちら高橋。至急第一校舎二階へ。」
そう連絡すると、ゆっくりこちらに体を向けてきた。
なんと普通の警察官だった。
「僕は大丈夫ですよ。皆さんこそ大丈夫ですか?」
もしかしたら、と思っていた三人は安心して肩をおろす。
「他の警察官はどこにいるのですか?」
「今ちょうど応援を呼びました。もうすぐ仲間がきます。」
すると後ろから三人の警察官が現れた。
「それではみなさん、安全なところへ案内します。」
と言ったとき高橋の近くで何かが棚から落ちた音がした。
するとちょうど柱の陰から手らしきものが出てきて、制帽が円を描くように転がった。
高橋はなぜか舌打ちをする。
「おまわりさん?」
そう拓也が言うと急に腕をつかまれ、手錠をはめられた。
「放しやがれ!この野郎〜!!」
三人は状況がわからず、ただ必死に逃げようとするができない。
「おい、こいつらを連れて行くぞ。」
さっきまでの優しい口調が逆転した。高橋はそういうと倒れてきた死体の襟を持って引きずってきた。
「そいつは置いていてもいいんじゃないか?」
「駄目だ。また他の人間に見つかったらいけないからな。どうせ奴らの餌にすればいいだろ。笹見教官にさしあげれば俺たちの位も上がるかもしれないからな。」
「そういえば滝ノ下が餌を連れてくるって言ってから、戻ってこないな。」
三人は愕然とした。拓也は咄嗟に聞いた。
「滝ノ下って、滝ノ下三郎!?!?」
警察官四人は鋭くこちらを睨んできた。
「なんでお前滝ノ下のこと知っているんだ?」
拓也はしまったと思った。今のことは言うべきじゃなかった。なぜかそう感じた。
「・・・い、いや〜・・・近所の交番にいたから・・・。」
高橋が何かを言おうとしたとき、妨害するように無線が入ってきた。
「こちら墨田。滝ノ下が三人、餌を連れてきた。でも南側にもう三人いるらしい。一人は自衛官だ、気をつけ・・・」
「もう捕まえた。今から持っていく。」
「本当か!?!?」
無線の向こう側でざわめいているのが拓也たちにも聞こえた。
「わかった。つれて来い。」
高橋は無線を肩章の所に引っ掛け、こちらを見てニヤリと笑った。
「もう終わった・・・。」
三人は確信した。
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