5/33
5 helios prologue
「今日お母さん夜勤なの。だから多少騒いでも大丈夫。」
私はキッチンから顔を出して言った。
玄関では、すでにレイラが靴を脱ぎ捨てていた。
「最っ高」
彼女は勝手知ったる様子でリビングに入っていく。
母は看護師だ。
夜勤も多い。
父はいない。
母と二人の生活は、静かだ。
裕福ではないけれど、困るほどでもない。
ただ——
夜が長い日がある。
私はもう慣れている。最近はノアが一緒にいてくれる。
それに今日はレイラがいる。
大きな紙袋を二つ、テーブルの上に置いた。
「ピザ二枚。あとタイ料理も頼んだ。」
「そんなに?」
「女子会ってそういうもんでしょ。」
レイラは肩をすくめる。
「それに——」
小さな瓶を取り出す。
「お酒。」
私は目を丸くした。
「レイラ……」
「大丈夫よ。ちょっとだけ。」
彼女はウインクする。
レイラは私より背が高い。
髪も、メイクも、服も、全部が大人っぽい。
同じ年齢なのに、別の世界の人みたいだ。
学校でも、彼女は堂々としている。
人を怖がらない。
私は、少しその後ろを歩くタイプ。
だから周りはよく言う、一緒にいるのが不思議と。
レイラと私は姉妹のようで。まあレイラがお姉ちゃんだろうな。
でも私は知っている。
レイラが、時々私の部屋で安心した顔をすることを。




