4 helios prologue
夕方。
自分の部屋。
ベッドに座る。
向かいの窓は静かだ。きっと試合後クラブでパーティーでもしているのだろう。
ノアとは最近私の部屋で会う。
ノアは窓から入ってくるようになった。
外で話していた時
「ねえ、窓まで登れそうなんだけど。やってみてもいい?」
ワクワクしながら聞いてくるから。
「どうぞ?出来るなら。怪我しても助けられないから気をつけて。」
「大丈夫!」
彼はフェンスを飛び越え、勢いよく壁を蹴りバルコニーに手を掛け登った。
「部屋に入ってもいい?」
私はクスクス笑いながら「ようこそ私の世界へ!」
最初は驚いた。
父親以外、私の部屋に入った男性はノアだけだ。それもすでに父親が入った回数を超えているだろう。
でも、いつの間にか慣れてしまった。
コン、と小さな音。
窓ガラスを指で叩く音。
私は立ち上がる。
カーテンを少し開ける。
隣の家、あの窓が目にはいる。
下を見るとノアが手を振っている。
私は小さく笑って窓を開けた。
彼は軽やかにフェンスを越え、バルコニーに足をかける。
「今日も来たの?」
「うん。だってここ落ち着くから。」
そう言って、私の部屋を見回す。
派手なものは何もない。
本棚と、ベッドと、机。
「ここ、静かでいい。」
ノアは床に座る。
私はベッドの端に腰かける。
「今日はさ——」
彼が話し始めたとき、
インターホンが鳴る。
レイラだ。
私は立ち上がる。
「ちょっと待って。今日、友達とパジャマパーティーなの。」
ノアが目を瞬かせる。
「へえ。」
「帰る?」
「……いや。」
少しだけ悪い顔をする。
「友達が嫌じゃなければ、参加したい。」
私はため息をつく。
ノアは窓際に座り自分の家の灯りがぽつぽつと夜に浮かんでいるのを見ていた。
エミリーの部屋の窓は半分だけ開いていて、
夜の風がカーテンをゆっくり揺らしている。
外はもう暗い。
いつも寂しさを埋めてもらっているのに今日たまけ追い出すのもな。
その選択が、素晴らしい瞬間を目撃することになるなんてまだ知らなかった。




