3 helios prologue
学校では、私はだいたい静かだ。ひっそりと誰かの目にとまらないように。
前髪を目にかかるくらいにし髪はいつも下ろしている。
なるべく人と目線が合わないように。
目が合うと、何かを期待される気がするから。話しかけられたもの上手いこと返せない。そんな自分が嫌になる。
教室の後ろの席の窓際。
男子と話すことはほとんどない。
話しかけられても、うまく笑えない。
声が小さいとよく言われる。
レイラだけが、遠慮なく私の机に座る。
「エミリー、また髪伸びた?」
「そう?」
「切りなよ。もったいない。」
彼女に両頬をつかまれた。
「う〜ん、可愛い顔!それに吸い込まれそうなこのアイスブルーの瞳。なんで隠すかな?髪も切って、うつむかずにまっすぐ前を見る。そしたら世界変わるかもよ?」
今度は顔を彼女の胸に抱き込まれた。
「まあ、私だけのエミリーを誰かに知られるのは嫌だから、このままのあなたも私は好きだけど。」
彼女は何も隠さない。
笑うときも、怒るときも、全部そのまま。
私はそれを、少し眩しいと思っている。
週末。
レイラに頼み込んで一緒に見に来たテニスの試合。
「一人で見たって怪しまれないわよ。あんたが誰を見てるかなんて。普段無い自意識過剰をここで発揮しないで。あなたと出掛けるならクラブとか、お買い物とか。はぁ…」
レイラは本当によく喋る。私は体を小さく丸めた。
テニスコート。
歓声。白いウェア。
ルーカスがコートに立っている。
光を浴びて。 観客の視線を集めて。
レイラが小さく鼻を鳴らす。
「やっぱり目立つわね。」
試合はあっという間に終わった。
彼は勝つ。
当たり前みたいに。
ルーカスがコートを出ると、女の子が近づく。
ルーカスは笑う。
距離が近い。近すぎる。
そのまま——キス。
胸が、ぎゅっと縮む。
レイラが呆れた声を出す。
「あんたも頭イカれてるよね。ルーカスを“ヘリオス”、太陽って呼ぶなんて。」
私は何も言わない。
「歩く誘蛾灯でしょ、あれは。」
私は苦笑する。 否定できない。
「まあいいわ。」
レイラは立ち上がる。
「じゃ、私はここまで。パジャマパーティーの準備をしなきゃっ。」
にやっと笑う。
「また夕方、エミリーの家に行くわね。」




