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窓の外の世界 恋する勇気のない私たち  作者: chippirock
rain

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27 Iris rain

エミリーとノアがキスしているのを見てからも

俺はいつも通り過ごした。

パーティー。酒。女。クラブ。

いつもと同じ。

何も変わらないはずなのに。

何かが、ずっと引っかかっている。

音楽の中でも。酒を飲んでも。女が隣にいても。

頭のどこかで浮かぶ。

フェンス。窓。エミリー。ノア。笑っている二人。額を合わせる距離。

グラスの氷が鳴り、俺は酒を飲み干す。

それでも消えない。

苛立ち。焦り。よく分からない感情。

何に対してなのか、誰に対してなのか。自分でも分からない。

ノアか。エミリーか。

それとも——自分か。

考えても答えは出ない。


その日も、俺はいつものカフェにいた。向かいに本屋があるあの小さい店。

女といる気分ではなくて俺は一人だった。

テラス席に座って、コーヒーを飲む。

空は灰色だった。

しばらくして雨が降り始めた。最初は弱く、でもすぐに強くなる。

客が少しずつ減っていく。

俺はカップを持ったまま、向かいを見る。

本屋の窓。あの場所。エミリーがいる。レジに立っている。いつも通り。静かな顔。

時間が過ぎ、雨はさらに強くなる。


カフェの客が少なかった。知らぬ間に長居したようだ。帰ろうと思った時、俺は無意識に窓を見た。

ドアが開き、エミリーが出てくる。

パーカーを着ているが、傘は持っていない。

俺は眉を寄せる。

雨はかなり強い。

普通ならタクシーを呼ぶ。誰かに迎えを頼む。

でもエミリーはそのまま歩き出した。傘もささず濡れながら家の方向へ。

俺は椅子から立ち上がっていた。自分でも気づかないうちに。

店を出る。雨が強い。

駐車場にある車へ向かう。キーを押す。ロックを外しドアを開け、運転席に座る。

その瞬間、少し止まる。

……俺、何してんだ。

エンジンをかけながら思う。

別に、放っておけばいい。あいつは家が近い。すぐ着く。

それなのに。

胸の奥が落ち着かない。

あのまま濡れて歩く姿が、妙に頭に残る。

俺は舌打ちした。

ハンドルを握る。

「……ちっ」

なんでだよ。なんで俺が。

そう思いながらも、車はもう動いていた。通りに出る。

すぐ先に、エミリーの後ろ姿が見える。

雨の中で、小さく見える。

俺は車を寄せた。

そして、ふと気づく。

このまま乗せたら座席が濡れる。きっとエミリーは気にして乗らないだろう。

俺は後部座席に手を伸ばすとスポーツバッグの中にタオルがあった。

それを取り出し、助手席の座面に敷く。

手が少しもつれる。

なんでこんなことしてる。自分でも分からない。

でも、もうやっている。


車をエミリーの横に寄せ、止める。

心臓が少し速い。

馬鹿みたいだと思う。ただ声をかけるだけだ。女と初めて話す子供じゃない。

それなのに。

一呼吸する。

それから、窓を下げる。雨の音が流れ込む。俺は言った。

「乗れよ」

エミリーが振り向く。

その顔を見た瞬間、胸が少し強く鳴る。

濡れている。髪も。頬も。パーカーも。

「ずぶ濡れじゃん」

俺はハンドルに手を置いたまま言う。

「隣の家だろ」

エミリーはまだ立ったまま動かない。

なんでそんなに警戒してんだ。

俺は少し苛立つ。

もし、これがノアだったら。

あいつはきっと笑って、すぐ乗る。

そんな考えが頭をよぎる。

その瞬間、胸の奥がまたざわつく。

苛立ち。悔しさ。よく分からない感情。

俺はもう一度言う。少し強く。

「乗せてやる」

雨は強く降り続いている。

昨日ブックマークが増えました。ありがとうございます。完結出来るように頑張りますので、これからもよろしくお願いします!

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