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第7話 帰 還(その5)

 荒野を抜け、渓谷を抜け、砂漠を抜け、森を抜け、草原を抜けて、無人の市街に入り、ようやく中層域の学校に戻った。

 改めて校門の前で見渡した空には、確かにどこにも太陽がなかった。

 考えてみれば日常生活においてそうそう日中の太陽を意識することはない。存在することが当たり前なのだから。

 だからずっと充駆は気づいてなかったのだ。ここが太陽の存在しない世界であることに。

 イートンの身体に戻って校門のセキュリティをクリアした充駆は、セーラーたちと一緒に向かった保健室のベッドにスクールセーターを寝かせると、深層域の氷原で制服評議会から言われた通り、イートンの姿のままで中庭へ向かう。


「ご苦労でした」

 中庭には制服評議会が待っていた。

「鍵の漂白を行います。百葉箱へ戻してください」

 言われるまま四面が開放状態になっている百葉箱へ制服廃止論者の意思で黒く染まった鍵を収める。

 井戸は崩れたままだったが全体が淡い光のドームに覆われていた。

 その様子に目を留めたことに気付いた制服評議会が告げる。

「井戸は深層域へつながるという性質上、中層域ここだけで完結している学校施設とは違って復旧に時間がかかるのです。井戸が直って鍵の漂白が終われば改めてイートンを次世代の主流派としましょう。それと、前にお話しした思念エネルギーがイートンの姿を戻す必要量に達するまでもう少しです。ゆっくりくつろいでください」

 やはり、ここでも制服評議会がボレロについて触れることはない。

 まるで“最初からそんな者は存在していない”と言っているようにも思えて、充駆は面白くない。

「……はい」

 そんなわだかまりを表明するようにあえて不機嫌に答えて中庭をあとにする。


 保健室のベッドで眠るスクールセーターは顔色もよく、白いセーターを汚していた血もいつのまにか消えていた。

「すぐ良くなりそうだな。ていうか、もう治ってるんじゃないか?」

 本来の自分の姿に戻った充駆が思わずそんなことを口にするほどに、深層域で見た“瀕死状態”の時とは別人のようだった。

「人間の意識が届く中層域ここなら生命力や回復力は人間の比じゃない」

 穏やかな表情で答えるセーラーのとなりでワンピが笑う。

「生命力ったって、オレたちは生物ですらねえけどな」

 その時、スクールセーターが目を開いた。

 ブレザーがその手を握りながら声を掛ける。

「なにも心配はいりませんわ」

 スクールセーターは横になったまま首だけで周囲を見渡してつぶやく。

「話がしたい……聞いてほしい話がある。どこか……ここ以外で」

 セーラーがその顔を覗き込む。

「ここじゃダメなのか」

「できればここ以外……ゆっくり話のできる所」

 スクールセーターの言葉に十センチのイートンとワンピが顔を見合わせる。

「ここ以外となると……」

「ねえな、うん」

 困った表情のイートンと諦め口調のワンピに全員が黙り込む。

 そんな静寂の中で、充駆は半ば無意識に口を開いていた。

「ウチ、来る?」

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