第7話 帰 還(その1)
星下の氷原にイートンの絶叫が響く。
充駆はただそれを聞くことしかできない。
おとなしく引っ込み思案なイートンから出るとは思えない血涙を絞るような慟哭を。
そこへ背後からかけられた声。
「どうやってオレたちより先に……いや、それよりなにがあった」
目を向けるとセーラーとワンピが立っていた。
少し離れた所では、ブレザーが血まみれ状態であおむけのスクールセーターを見下ろしている。
充駆は口を開くも――
「え……いや……」
――言葉が出ない。
黙ってセーラーに鍵をかざしてみせる。
奪還した鍵、イートンの慟哭、姿のないボレロ――状況を察したセーラーが無言で充駆の身体を抱きしめる。
正確にはイートンの姿を、そして、まだ哭き止まないイートンの意識を抱きしめる。
ようやくイートンが落ち着いてきた頃、頭上で静かに揺らめいていた制服評議会がささやいた。
「その鍵は色を見たらわかる通り、まだ制服廃止論者の意思に染まったままです。クレバスの底、集合無意識の海へ落とす前に漂白をしてイートンの意思で染め直す必要があります。学校の中庭へ持ち帰ってください。そこで漂白します。では、よろしくお願いしましたよ」
それだけ伝えると六つのレンズを表面に張り付けたスライムはゆらゆらと高度を上げて、やがて星空にまぎれて見えなくなった。
その消えた先に目を凝らしながら、充駆は怒りにも似た感情を覚える。
「どーした、充駆?」
全身から漏れる怒気を感じたのかワンピが充駆を見上げる。
「いや。ボレロがいなくなったのに……無反応なのかなって」




