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第6話 追跡行(その2)

 学校を出てボレロの先導に従って走る。

 もちろんイートンの身体であることは言うまでもない。

 校内マラソン大会も徒競走もダントツ最下位の充駆の身体では足手まといにしかならないことはわかりきっているのだ。

 大きな胸を揺らしながらも涼しい顔のボレロとともに、どのくらい走ったのかわからないほど走り続けたが、やはりイートンの身体ゆえに息が切れたり足が上がらなくなったりすることはなかった。

 学校の周囲にあった町並みはやがて途切れ、草原を経て森が見えてきた。

 空もいつのまにか夕暮れ色を呈している。

 充駆にとって、この世界で初めて見る夕焼け空だった。

 しかし、その空に充駆は違和感を覚える。

 走ったまま考えて、違和感の正体に気付く。

 充駆の知る夕焼けは日が沈む西の空を中心に空を染めていた。

 しかし、今、見上げている空は全体があかね色に染まっている。

 それはまるで空全体が燃えているように、血に濡れているように。

 同時に潜在意識空間における“空の異常”に初めて気付く。

「太陽がないっ」

 思わず声を上げて立ち止まる充駆にイートンが答える。

「ずっとありませんけど?」

 ボレロも立ち止まって振り返る。

「いまさらなに言ってんすか」

「そ、そうだっけ?」

 戸惑っている充駆にイートンが説明する。

「ここでは空の明るさっていうのは現実世界から漏れてくる人間の意識なんです。なので潜在意識の奥に進むほど人の意識から遠ざかって……空も深層域に近づくにつれて暗くなっていって、町並みみたいな人工物も消えていくんです」

「ということは、この先の深層域って……」

 どんな場所なんだ?

「えーっとですね、夜空の下に広がる氷原みたいな……。その氷の下に集合無意識の海が広がっているんです」

 ボレロが口を挟む。

「あと、このへんには悪魂あくだまもいるっす」

「悪魂?」

 それがなにかはわからないものの、嫌な響きに思わず表情が渋くなる充駆へボレロが続ける。

「深層域まで行くと流石にいないっすけど、ここくらいならうようよいるっす。人の意識から遠ざかることで、理性の押さえがなくなって自由を得た悪意や煩悩が。それを悪魂って呼んでるっす。ケモノみたいなもんすから知性はないっす。そろそろ、そいつらが襲ってくる層域に差し掛かってるっす。さ、急ぐっすよ」

 そう言って目の前に広がる森へと走り出す。

 慌てて充駆が後を追う。

 お化けの話を聞かされたあとで夜道に置き去りにされそうなこどものような気持ちで。

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