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第5話 殺しあう!(その7)

 一面が白く染まった廊下でワンピは姿勢を落として目を凝らす。

 姿勢を低くしたのは充駆がこの煙幕にまぎれて反撃に出ることを警戒してのことだった。

 しかし、充駆の反撃がないまま煙幕が終息し、消火剤が床に堆積していく。

 明瞭になりつつある視界で立ち上がりながら手裏剣を構える。

 その時、すぐ近くで“がしゃん”と大きな音がした。

 視界の数メートル先は校舎の突き当りで、その手前に上下階への階段と北校舎への渡り廊下の入口が見えるがどこにも充駆の姿はない。

 ただ、下半身を守る盾代わりにしていたイスだけが残されている。

「逃げたかっ」

 ひとまず構えたままの手裏剣を光の粒子に四散させて走り出そうとするが、粉雪のように降り積もった消火器の内容物によって足元が滑ることに気づいてすぐに立ち止まる。

 慎重に足を進めて異変に気付く。

 いつもは開いているはずの北校舎へ続く渡り廊下の防火扉が閉じている。

 すぐにそれがさっき聞こえた“がしゃん”の正体であることを理解する。

 観音開きの鉄扉に手を掛けて片面を開いて通路を窺う。

 すでに人の姿も気配もない。

北校舎あっちへ逃げやがったか……」

 つぶやいて足を踏み出す。

 直後、閉じたままの片面の陰からハンマーが振り下ろされる。

「そんな手に引っかかるわけねーだろっ」

 ワンピが床を叩くハンマーから通路の奥へと転がるように身をかわし、集束させた手裏剣を投げる。

 これまで飛来する手裏剣を弾き飛ばしていたハンマーだが、今のそれは振り下ろした直後であり、さらに至近距離からの投擲ゆえに充駆は対応できない。

 すかさず首をすくめる充駆の顔面を狙って撃たれた手裏剣は、教科書やノートを巻き込んで作ったジャージのターバンを切り裂く。

 同時にワンピが手裏剣を消す、直後に手元に集束させる、そして、むき出しになった充駆の頭部目掛けてトドメの一閃を打とうとした瞬間――足下が崩れ出す。

 防火扉の陰から充駆が振り下ろしたハンマーによって叩かれた床が崩れ出す。

 切り詰めた予算で作られた高架型の――天井には雨漏りの染み、壁には小さなひび割れ、そして、床を所々が欠損したタイルが敷かれた古い連絡通路が崩れ出す。

 駐車場のアスファルトを穿ち、クレーターを形成した超重量級のハンマーで叩かれて崩れ出す。

 投擲態勢を維持できないワンピは姿勢を崩しながら、通路の崩落に巻き込まれるように落下していく。

 落下しながら気づく。防火扉の陰からハンマーを振り下ろした充駆の目的が、自分を通路の奥へと進ませることと連絡通路を崩落させることだったことに。

 そこへ落下しながらも態勢を維持している充駆がワンピの前頭部にハンマーを振り下ろす。

 しかし――。

「イートン、ごめん。無理だ」

「はい?」

 直撃する寸前でハンマーは光の粒子になって拡散した。


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