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第5話 殺しあう!(その1)

 放課後になって向かったいつもの公園にボレロの姿はなかった。

「充駆さん、こっちです」

 ふいに聞こえた声に目を向ける。

 顔のすぐ横に十センチのイートンが浮かんでいた。

 今日はボレロがいない。

 昨日の別れ際に聞いた話を思い出す。

 トーナメントが始まれば情報管理の面からトーナメント終了までの間は参加者同士の会話が制限される。

 具体的には制服評議会の検閲を経たメール限定となるのだ。

 イートンが充駆の胸元へ寄りそう。

「お願いします」

 その一言がイートンの姿へ変わることと理解した充駆は戸惑う。

「ここから?」

 いつもは潜在意識あっちへ行ってからだったが?

「今日はボレロがいないので」

「ああ、そうか」

 いつもはボレロがスマホを操作することで移動していたが今日は自分たちでやらねばならない。

 十センチのイートンではスマホを取り出すことも操作することもできないのだ。

 イートンを両手で包み込むのと同時に充駆の容姿がイートンに変わる。

 容姿切替にも慣れて、所要時間はすっかり短くなり違和感もなくなった。

「左手をぎゅっと握って……開いてください」

 頭の中で聞こえるイートンの声に従って、言われるまま手を握って開く。

 その手の中にスマホが現れた。

「赤いアイコンをタップしてください」

 言われた通りに操作すると、周囲が公園から校門前に変わった。

 その向こうに建つ三階建ての校舎に目をやり、ふうと息をつく。

「充駆さん?」

 その呼びかけは充駆のため息に対して戸惑っているようにも、心配しているようにも聞こえる。

 充駆が答える。

「いや、これから殺し合いが始まるんだなあ、とか思ってさ。実感がないっていうか」

「大丈夫です。がんばりましょう」

「うん。がんばろう」

 応えてから、殺し合いをか?――と思わず苦笑する。

 校門を入った所で左手のスマホが着信を知らせた。

 表示されたメッセージは。

『一年一組の教室へ入ってください』

 改めて「よしっ」と声を上げて全身に力をこめ、生徒玄関へ足を進める。

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