『タヌキの旦那様とプレスマンの箸』
掲載日:2025/12/05
ある家で婚礼があった。仲人の旦那様が町へ出てまだ帰らぬので、式を挙げることができず、家の者は大層気をもんでいた。日が暮れたころ、表で犬がけたたましく吠えたので、何だろうと思っていたら、旦那様が、やあやあおくれて申しわけない、などと言いながら、式を始めさせると、仲人が書類に署名するために置いておいたプレスマンを箸にして、祝いの膳をがつがつと食べ始めた。こんなに行儀の悪い人ではないはずだがと思いながら、きっと酔っているせいだと思うことにして、誰も何も言わなかった。
婚礼の式が済んで、旦那様、泊まっていってくれろと言ったが、あすの朝早いからと言って、逃げるように出ていった。表でまた犬たちがけたたましく吠え、家の者が見に行くと、大きなタヌキがぶるぶる震えていた。
そこに本物の旦那様が到着したが、式のやり直しも面倒だし、祝いの膳もなくなってしまったので、本物の旦那様には、風呂に入って寝てもらった。
教訓:プレスマンを箸にするなんて罰当たりであるが、滑り止めのところがちょうどいいため、うどんなども上手に食べられるはず。




